「インフラの次はコンテンツで勝負」のインテル
2006/1/11
新CEOのポール・オッテリーニ氏が最新モバイルテクノロジーと対照させるべく示しているのは、25年前に登場した米モトローラ製携帯電話と、ノートPCの原型となるポータブルPC |
米ネバダ州ラスベガスで1月5〜8日(現地時間)に開催された家電関連のトレードショウ「International CES(Consumer Electronics Show) 2006」の初日、基調講演に立った米インテルCEOのポール・オッテリーニ(Paul Otellini)氏。昨年2005年5月に前任のクレイグ・バレット(Craig Barrett)氏から最高責任者の地位を引き継いだ同氏は、デュアルCPU化とホームネットワーキングへの取り組みを語った。
オッテリーニ氏のCEO就任後初の大仕事の1つは、デュアルコアプロセッサ事業の立ち上げだ。インテルは同氏の下で、2006年には製品ラインを一新し、サーバ関連の全プロセッサ、デスクトップPCとノートPC両プラットフォーム向けプロセッサの6〜7割以上を従来のシングルコアからデュアルコアへと移行させるという、大胆なロードマップを描いている。
今回オッテリーニ氏によって正式にアナウンスされたノートPC向けの新ブランド名は「Centrino Duo」と「Centrino Solo」。CPUやチップセット、無線LANの3つのコンポーネントの集合体につけられたブランド名「Centrino」を軸に、デュアルコアプロセッサには「Centrino Duo」、シングルコアプロセッサには「Centrino Solo」の名称がそれぞれ与えられている。
オッテリーニ氏が「Centrino Duoのデモを行う人間を紹介しましょう」といって登場させたのは、米デル会長のマイケル・デル氏。現行のシングルプロセッサとの機能比較デモを実施しつつ、デルの最新PCを紹介した |
「過去数十年の間にPCに求められる役割は増加しており、マルチメディアの世界においても複数のアプリケーションが同時に利用されるケースが増え、マルチタスクの果たす役割が重要な意味を持つようになってきた。従来までインテルでは“GHz”の数値を追い求めることに終始してきたが、ここで方針転換し、2つのプロセッサコアを組み合わせてより高パフォーマンスで低消費電力のプロセッサを作り出すことを決めた。新プロセッサは従来品よりも最大68%高速で、28%低い消費電力で動作し、より優れた無線LAN機能を提供できるようになる」と、同社のノートPC向け製品では初となるデュアルコアプロセッサにかける意気込みを語った。
しかし、今回の基調講演最大の目玉は、2005年夏のIDFで紹介した新しい家電向けプラットフォーム「Viiv」(ビーブ)に関する製品発表だ。「より簡単な操作でPCのデジタル世界をリビングルームに持ち込む」ことを目的としたViivは、セットトップボックスやデジタルレコーダの形状をした専用装置とオンラインサービスを組み合わせることで、ビデオ・オン・デマンドなどのサービスを家庭で楽しめるものだ。
モーガン・フリーマン氏をはじめ、ハリウッドの先鋭クリエイターらが集合 |
「デュアルコアプロセッサによる高パフォーマンスや、無線LANとブロードバンドによる豊かなネットワーク環境を実現したプラットフォームが登場したいま、足りないのは付加価値のあるプレミアムコンテンツの存在だ。逆にいえば、コンテンツのないプラットフォームには価値がない」とオッテリーニ氏は説明する。インテルはスポーツチャンネルのESPNやディレクTV、AOL、ヤフーといったビデオ/音楽/ゲームなどのコンテンツ事業者との提携をアナウンスし、壇上でコンテンツアクセスのデモンストレーションを行った。またViiv端末の提供メーカーとして、ソニーやデルといったメーカー各社の製品を紹介した。Viiv対応端末は、発表日から数カ月内にも出荷が開始されることになるという。Viivのスタートのタイミングで、業界100社以上の参加が予定されていると、オッテリーニ氏は肝となるコンテンツサイドからの力強いバックアップを強調する。
これを印象づけるかのように、壇上にアカデミー俳優のモーガン・フリーマン(Morgan Freeman)氏らを招いて、昨年インテルと同氏らが設立したオンライン向けコンテンツの製作を行う映画スタジオ「ClickStar」の紹介も行った。壇上にはさらにトム・ハンクス(Tom Hanks)氏やダニー・デビート(Danny DeVito)氏ら4人がクリエイターとして招待され、ClickStarの記念すべき1作目の作品も紹介された。
「インテルが目指すのは、ただの標準ではない。普段の生活を新しい経験で置き換える『新しい標準(New Normal)』の実現だ。Centrino DuoとViivは、それを実現する2つの大きな柱となる」と、オッテリーニ氏は語った。
(鈴木淳也/Junya Suzuki)
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