「Office“12”」が国内初公開、XML連携にかけるMS
2006/2/3
マイクロソフトは2月2日、神奈川県横浜市で開いた開発者向けのイベント「Microsoft Developers Conference 2006」で、今年下半期にも開発を終える予定の「Office“12”」(開発コード名)を国内で初めて公開した。米マイクロソフトのインフォメーションワーカー ビジネスグループ ゼネラル マネージャ 沼本健氏は「協業」「結果指向のユーザーインターフェイス」「データ可視化」などのキーワードを挙げてOffice“12”を説明した。
米マイクロソフトのインフォメーションワーカー ビジネスグループ ゼネラル マネージャ 沼本健氏。通商産業省(現経済産業省)を経て1997年に米マイクロソフトに入社した |
協業とは、Officeの各ソフトウェアとほかの業務アプリケーションとの連携。Office“12”のWord、Excel、PowerPointは新たにXMLをベースにした文書フォーマットを採用する。前バージョンのOffice 2003ではWordがフル機能でXMLをサポートしていたが、Excelはフル機能に対応していなかった。
Office“12”では、Wordは「.docx」、Excelは「.xlsx」、PowerPointは「.pptx」の拡張子が付く。これらのフォーマットは圧縮ファイルフォーマットの「Zip」をコンテナとして利用している。拡張子を.docxなどから.zipに変更するとフォルダとして展開でき、格納されたXMLファイルを確認できる。格納されるXMLファイルは、文書プロパティ、コメント、ユーザー定義、スキーマ、画像、ビデオ、WordML、SpreadsheetMLなど。
文書フォーマットがXMLベースになることで、Officeとほかアプリケーションとの連携が容易になる。1度作成した文書の再利用も簡単になる。また、Zipベースのため、ファイルサイズが小さくなるだけでなく、「ファイルを送信する場合は、大事なXMLファイルを優先して送信する。トラフィック中に障害が起きてもファイル全体が破損することが少ない」(沼本氏)という。
「いままでのOfficeはバイナリを使い、ブラックボックスだった。しかし、XMLベースになることで、ドキュメントとデータの差がなくなり、ほかのプログラムがWordやExcelと連携したり、ファイルを作成することが可能になる」(沼本氏)。米マイクロソフトのデベロッパー&プラットフォーム エバンジェリズム グループ コーポレートバイスプレジデントのサンジェイ・パラササラシー(Sanjay Parthasarathy)氏は「Officeはエンタープライズ・アプリケーションのフロントエンドになるだろう」と語り、XML連携でバックエンドシステムとの連携を本格的に進める考えを強調した。
マイクロソフトはOffice 2000、XP、2003を使うユーザーに対して、コンバータを配布し、新しいXMLベースのファイルフォーマットを扱えるようにする。沼本氏は企業のIT管理者向けに多数のファイルをバッチ処理で変換できるツールを配布する考えも示した。また、グループポリシーを設定して、Office“12”のデフォルトを以前のファイルフォーマットに変更することも可能だという。
マイクロソフトはこのXMLベースのファイルフォーマット「Microsoft Office Open XML Format」をオープン仕様として標準化する考えで、Ecma Internationalに提案している。XMLベースの文書フォーマットでは、「OpenOffice.org 2.0」が採用している「Open Document Format for Office Applications(OpenDocument)1.0」がOASIS標準として承認されている。沼本氏は「Officeの顧客は4億人で、すでに膨大なファイルの資産がある。後方互換性に対応しながら、XMLの価値を提供するのがわれわれの仕事だ」と述べた。
Office“12”ではWebとの連携も本格化する。Excelでは「Office SharePoint Portal Server」と連携し、Excelで作成したデータをサーバ上に出力できるようになる。Webブラウザを使ってアクセスでき、ブラウザ上でデータの計算なども可能。InfoPathで作成したXMLベースのフォームをWebベースに変換することも容易になる。SharePoint上で、Excelサービス、InfoPathサービスが動いている状態で、実際のデータ処理はサーバ側で行う。Excelとバックエンドシステムが連携しているシステムでは、その構成のままWebブラウザでアクセスできるようになり、「クライアントがWebブラウザを通じてバックエンドの生のデータを利用できる」(沼本氏)という。
Office“12”のExcelが採用した結果指向のユーザーインターフェイス。メニューから選ぶだけでセルにグラフなどを重ねられる |
結果指向のユーザーインターフェイスとは、ユーザーが望む画面上のデザインをあらかじめ用意することを指す。PowerPointでは箇条書きなどの文書に対応したテンプレートを用意し、ユーザーが選択するだけで簡単に適用できるようにする。これまではユーザーが1からデザインする必要があったが、「ユーザーのコンセプトを結果指向で表現できるようになる」(沼本氏)。Excelでも入力した数値に合わせてグラフの色が自動で変化する機能を追加し、「データ可視化」ができるようにする。ユーザーがすべてを選択するのではなく、「結果を選んでもらう」(同氏)がコンセプトだ。
また、Office“12”ではメニュー表示にタブを採用する。WordやExcelは多機能で、必要とする機能を見つけられないケースも多い。各コマンドをタブでまとめることで機能を見つけやすくし、ユーザーの利用を促進する狙いがある。タブのメニューを搭載するのは、Word、Excel、PowerPoint、Accessと、電子メールの作成画面などOutlookの一部機能。
沼本氏はOffice“12”について「ワープロ、プレゼンテーションなどのデスクトップ・アプリケーションだった10年前のOfficeと比較して、コラボレーション、コンテンツ・マネジメントなどその範囲がずっと広がっている」と述べた。また、Office“12”の製品名については「もうそろそろしたら発表したいと思う」と語った。
(@IT 垣内郁栄)
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