「オラクルの戦略は技術革新と買収」、エリソンCEOがすべてに答える
2006/3/3
米オラクルのCEO ラリー・エリソン(Lawrence J. Ellison)氏は3月2日、「Oracle OpenWorld Tokyo 2006」の基調講演終了後に報道機関向けのQ&Aセッションを行い、「ナンバー1になるために技術革新と買収を続ける。ソフトウェア業界の統廃合はまだ終わっていない」などと語った。主な質疑応答は以下。
――7年ぶりに日本で講演したが、日本市場はここ数年あまり重要ではなかった?
桜が咲くころ、もみじのころにはいつも来日し、顧客に会っている。しかし、Oracle OpenWorld Tokyoは梅の咲くころよりも早い時期に開催されてしまうのが残念だ。日本は極めて重要な市場だ。
質問に答える米オラクルのCEO ラリー・エリソン氏 |
――ソフトウェア業界の統廃合は終わったか
いやまだ終わってはいない。終わりの始まりであるという答え方をしよう。自動車関連企業よりもソフトウェア企業は多い。ソフトウェア業界が成熟化すれば、いまよりも数は減っていく。コンソリデーションは続くと思う。
――MySQLのコンポーネントの会社を買収したが、MySQL買収の関心はあるか
オラクルはほとんどすべての企業と語ったことがあり、MySQLとも話をした。オープンソースソフトウェア(OSS)企業では、オラクルはMySQLよりも人気のある「Berkeley DB」の開発元、Sleepycat Softwareを買収した。Berkeley DBは、オラクルにとっては貴重なビジネスと考えた。また、OSSではないがTimesTenを買収した。これからもビジネス上納得でき、ソフトウェアでオラクルが実現していないものは買収していく。MySQLは、買収リストのトップのほうではない。
――ソフトウェアでナンバー1になるためにオラクルが足りないのは
確かにIBMはミドルウェアで1位。しかし、BEAシステムズと比べてもオラクルの成長率の方が高い。1位になるためには技術革新を続け、買収を続けることになると思う。技術革新と買収が戦略の2本柱だ。
また、オラクルはSAPよりも速いペースで成長している。ERPでは追随しているが、CRM、HCMでは先を行っている。金融、通信業界向けでもオラクルは1位だ。ただ、石油、ガス業界向けではSAPはかなり強みを持っている。おそらくオラクルがこの業界向けでSAPを追い越すことはない。すべての業界で1位になれるとは思っていない。
――SOAの展望は?
SOAは重要な新しいテクノロジだ。しかし、人によっては、SOAは1000の異なるアプリケーションを魔法のようにのり付けて、シンフォニーを演奏するかのように連携させられると考えている。だが、そうではない。
オラクルはSOAを重要だと考え、100%コミットしている。魔法のような存在ではないが、連携の手助けにはなる。ほとんどの顧客はSOAに移行するだろう。オラクルはアグレッシブにSOAに移行している。それをリスキーと考えるほかのベンダもいる。しかし、古いテクノロジにこだわるのは、SOAに移行するよりもリスクが高い。アプリケーションでも、ミドルウェアでもSOAに移行しないとナンバー1は維持できない。
――PeopleSoftやJD Edwardsと「Oracle E-Business Suite」を統合して、2008年にも発表するという「Oracle Fusion Applications」は、Oracle Database以外もサポートする?
長きに渡って全顧客と対話し、PeopleSoftやJD Edwardsの顧客に「Fusion Applicationが複数のデータベースで実行するのがいいのか」と質問している。(この質問の答えは)顧客がわれわれに教えてくれるだろう。オラクルが顧客に無理強いをするのではない。いまは顧客と一緒に何が最善なのかを模索している段階だ。セキュリティが1番なのか、IBM
DB2、Microsoft SQL Serverをサポートするのが一番いいのか、顧客の声を聞きたいと思う。その結果、われわれがふさわしい決定をすることになる。今年中に何かしらの決定を下したい。
――日本ピープルソフトと日本オラクルの統合はどうするのか
日本オラクルが上場会社のため合併させるのは簡単ではない。2段階のプロセスを経由することを考えている。日本の子会社を1社にするのがわれわれの狙いだ。まずは、ある100%の子会社に、これまで買収した企業を統合し、それから日本オラクルと合併させる。複雑なために時間がかかっている。
――OSSが商用ソフトウェアに与える影響は
OSSが従来のソフトウェアに置き換わることはないと思う。部分部分ではあるかもしれないが。
OSSは神話的な雰囲気がある。しかし、Linuxを開発したのはIBM、インテル、オラクルだ。つまりOSSは、すべてはオープンで、無償であると信じる共産主義的な開発ではないのだ。いずれにしてもOSSの動きは精査する必要がある。Apacheは大変に成功しているが、本当によいOSSのビジネス・インテリジェンス製品はまだない。ここにはかなりのギャップがある。
大手の産業系の企業が積極的にOSSに投資すれば成功する可能性がある。Linuxに関してはIBM、オラクルがサポートしなければここまで成功しなかった。OSSは表面上ほど単純ではない。とはいいながらもオラクルはOSSに確信があり、信じている。オラクルは取捨選択をしてOSSにかかわっていきたい。OSSが勝てる領域で連携していく。
(@IT 垣内郁栄)
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