組み込み開発環境の仮想化で「デバッグを短縮」、コーウェア

2006/3/28

 米CoWareの日本法人コーウェアは3月27日、プロセッサやドライバなどのハードウェア環境とデバッガなどの周辺環境をPC上に仮想的に再現することで、開発効率を向上させる組み込みソフトウェア開発向けの新ツール「Virtual Platform プロダクト・ファミリ」を発表した。組み込みソフトウェアの開発はハードウェアの開発を待ってスタートするのが一般的だが、新ツールを使うことでハードウェアの開発と同時にソフトウェアの開発を始められるという。

米CoWareのマーケティングディレクター マーク・セルゲッティ氏

 新ツールは米モトローラと共同開発した。モトローラは携帯電話の今後のすべての開発で同ツールを活用する。CoWareは1996年に設立された未公開企業。米国サンノゼに本社を置く。

 Virtual Platform プロダクト・ファミリは組み込みソフトウェア開発のための仮想プラットフォームをPC上に構築する。仮想プラットフォームは組み込みソフトウェアを稼働させるハードウェアを仮想的に構築。プラットフォームでは仮想ハードウェアの正確な挙動の制御、観測が可能で、組み込みソフトウェアの正確なテストが可能だという。仮想プラットフォーム自体を開発パートナーなどに配布し、同じ環境で組み込みソフトウェアを開発、テストすることもできる。

 コーウェアは、仮想プラットフォームはソフトウェアのデバッグに特に有効としている。CoWareのマーケティングディレクター マーク・セルゲッティ(Marc Serughetti)氏は「実機を使ったデバッグでは実機完成を待つ必要があり、開発が遅れる。ハードウェアの個別の不具合の影響も受ける」と指摘。対して、仮想プラットフォームを構築することで「ハードウェアを入手する前に組み込みソフトウェアを開発、検証できる」として、「統合とデバッグ、システムテストの工期短縮に効果がある」と説明した。

 モトローラの携帯電話開発のケースでは、Virtual Platform プロダクト・ファミリを使うことで仮想プラットフォーム上で全体の75%に当たる不具合を発見し、修正。1端末当たりの開発期間を30日削減できたという。Virtual Platform プロダクト・ファミリを使うことによるモトローラのコスト削減効果は、年間50億円に上るとコーウェアは説明している。

 Virtual Platform プロダクト・ファミリは、SystemCを使った仮想プラットフォームのモデリング機能と、仮想プラットフォームのパッケージング、配布機能がある「Virtual Platform Designer」、仮想プラットフォームのインストール機能、仮想環境の制御ツール、APIなどを含む「Virtual Platform」で構成する。

 コーウェアによると、同社の売り上げのうち約4割は日本のエレクトロニクス企業が占める。30人の社員を今年は35人に増員する計画で、日本企業へのVirtual Platform プロダクト・ファミリの拡販を図る。

(@IT 垣内郁栄)

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コーウェアの発表資料

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