日本はRFID実証実験の最先端を走っている

2006/3/31

 Auto-ID ラボ・ジャパンや流通システム開発センターなどは3月30日、「第4回 EPC RFID FORUM」を開催した。FORUMでは、EPCglobal Japanの活動報告がされたほか、Auto-ID ラボ・ジャパン会長の村井純慶應義塾大学教授による講演などが行われた。

流通システム開発センター 電子タグ事業部部長 宮原大和氏
 EPCglobal Japanの近況報告を行ったのは、流通システム開発センター 電子タグ事業部部長 宮原大和氏。同氏は、現在EPCglobalは、商品コードの標準化団体「GS1」などを中心に組織化されており、食品関連や医療関連、国際物流関連などの部門に分かれてそれぞれ意見交換を行っている。EPCglobalの理事会には、GS1メンバー会員と家電代表としてのソニーの2名(全17人中)が参加。標準化活動などに貢献している。

 EPCglobalの会員数は、2006年1月時点で774社。アジアの会員数が2005年の全体の16%から20%に急増している点がポイントだという。宮原氏は、「アジア各国で、ソリューションパートナーが急増したのが要因だろう」と分析した。日本のEPCglobal Japanの会員数は2006年2月時点でエンドユーザー20社、ソリューションパートナー12社の計32社。この数値は、米国、ドイツに続く世界3位となる。

 今後の動きとしては、自動車産業やボーイングを中心とした航空産業、アパレル、防衛産業などの業界がアクショングループ立ち上げの準備を進めており、EPCglobalへの参画が本格化している。日本では、2005年10月に国内主要家電メーカー8社がコンソーシアムを結成したことから、「家電分野においては、EPCglobalを牽引してほしい」(宮原氏)とコメントした。また、宮原氏は「日本はバーコードが非常に発展しているので、費用対効果の面で欧米ほどメリットは出ないかもしれないが、機能面でのメリットは大きいだろう」とコメント。「意外と知られていないが、日本はRFIDの実証実験が最も進んだ国であり、RFIDに何かをプラスアルファするための検証に最適だ」と述べた。

Auto-ID ラボ・ジャパン会長の村井純慶應義塾大学教授
 続いて村井教授が登壇。同氏は、Auto-ID ラボ・ジャパンの大きな役割として「EPCシステムに貢献する」「グローバルな視点を持つ」「RFIDのキッチリした研究」の3点を挙げた。そして、このRFIDの分野では珍しくグローバルベースで産学の連携がうまくいっているとし、「日本は特に産学の密着の密度が濃い。よい見本になっている。私たちの誇りだ」(村井氏)と語った。

 また、RFIDは“無線をベースとした知識へのネットワーク”であると表現、「RFIDの世界を作るためには、“未来の情報空間を作る”という意識が必要だ」と述べた。そのほか、Winnyについても言及。Winnyを代表としたPtoPの説明を「あて先のないメッセージを出したり、質問すると誰かが応えてくれるようなネットワーク」と表現し、「Winnyを代表とするPtoPネットワークはインターネット上にあるので、まさにオーバーレイネットワークの代表例だ。このオーバーレイネットワークの発想がRFIDでは重要となる」と説明した。

 RFID普及のポイントでは、「よい技術が勝つとは限らない、マーケット、消費者が選んだ技術が生き残るのだ」と語り、マーケットの重要性を挙げた。そして、マーケットニーズを汲むためにも、ひたすら実証実験を繰り返すことが重要だと説いた。また、スペースシャトルでは、何百万個にもおよぶ部品の品質などをすべて一元管理しなければならないとし、東証のシステムやRFIDはユーザーや製品などがそれぞれ自律的に動くことから、スペースシャトル以上に管理が難しく、その管理のための設計が重要だとした。最後に村井氏は、「人の役に立つためには標準化が必要だが、それを推進するためには産学の連携が重要だ」と語り、今後一層産学の連携を強化する必要性を説いた。

(@IT 大津心)

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