NGN実現に向けたさまざまな道筋を議論

2006/5/12

 リックテレコムは5月11日、東京・秋葉原で「次世代ネットワーク&サービスコンファレンス2006」を開催した。このなかで総務省や通信事業者がそれぞれの次世代ネットワーク(NGN)戦略について語った。

 総務省総合通信基盤局電気通信事業部電気通信技術システム課の渡辺克也氏は、政府が通信事業者によるNGNへの移行を支援する理由を3つ挙げて説明した。

 1つ目はユビキタスネットワーク社会の実現。有線、無線のさまざまなネットワークがIPで結ばれていき、新たなアプリケーションを生み出していく環境を、NGNで早期に実現していくことができるという点。

 2つ目は国際競争力の強化。欧州主導で進みがちなNGNの標準化について、日本として発言していく立場を確保していきたいという点。

 3つ目はコスト低減効果。ユーザーの支払う通信サービスコストの低減が期待できるとともに、ユーザー、事業者の双方にとって選択肢が広がるという点である。

 総務省は、次世代IPネットワーク推進フォーラムにおける議論を踏まえ、2007年末までにネットワークのIP化に対応した技術基準の見直し完了を予定。2010年を短期的なターゲットとしてNGN基盤技術の研究開発、実証実験、相互接続性検証などを進める一方、ITUにおける標準化作業にこれらの成果をインプットしていきたい考え。

 また、2015年に向けた長期的なビジョンとしては、現在の通信網、NGN、そしてインターネットの3つを自在に使い分けることで次の段階に進化することを目指すという。

日本テレコム専務執行役CTOの弓削哲也氏

 一方、日本テレコム専務執行役CTO 弓削哲也氏は、同社の次世代構想を、ネットワークとアプリケーションの融合という観点から語った。

 日本テレコムはオールIPネットワーク化構想「PRISM」を現実化してきたが、今後はさらにグリッド、ユーティリティ・コンピューティングといったコンセプトを取り込んでいくことで、ITと通信を融合したICT事業者を目指すという。

 PRISMに続く同社の次世代ICTプラットフォームサービス構想は「IRIS」(虹の意味)という名称を与えられている。この構想では、サーバリソースやアイデンティティ管理といったITシステムをネットワーク機能として取り込むことにより、必要なときに必要なだけITシステムを利用できる世界を実現する。また、アプリケーションから直接に、ネットワークの品質を制御して利用できるようにしていくという。さらに、固定通信とモバイル通信の融合と、一元的な認証システムの組み合わせにより、通信手段を気にすることなく、サービスやアプリケーションを継続的に利用できるような環境を提供していきたいという。

 日本テレコムでは、「ULTINA」というブランド名で、IRISの実現に向けたサービスを展開し始めている。例えば「オンデマンドプラットフォームKeyPlat」では、ネットワーク、サーバリソース、ソフトウェアライセンスを一括提供し、ネットワークやサーバCPUの利用率が事前に設定されたしきい値を超えると、これらをダイナミックにその場で拡張できるような仕組みを提供している。

 KeyPlatでは、サーバリソースの統合によりコストを削減できるほか、サービスの配備に要する時間を短縮することができるという。

 弓削氏は、ITUなどが進めるNGNについて、プラットフォームとネットワークに主眼が置かれている点を指摘した。日本テレコムのNGNでは、プラットフォームとネットワークを、さらにサービスレイヤをオープンなインターフェイスで組み合わせていくことを目指していると話した。

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