Web 2.0の非テクノロジ要素が影響

「Writely登場でMSに対する人の心に変化」、ガートナー指摘

2006/11/29

 「Web 2.0はテクノロジだけを指すのではない。ビジネスに影響を与えるのはWeb 2.0の非テクノロジ要素だ」。米ガートナーのアプリケーション リサーチ ディレクター チャールズ・エーブラムズ(Charles Abrams)氏は11月29日、ガートナー ジャパンのイベントで講演し、Web 2.0が企業に与える影響を説明した。

gartner01.jpg 米ガートナーのアプリケーション リサーチ ディレクター チャールズ・エーブラムズ氏

 AjaxやRSSなどテクノロジ面が注目されるWeb 2.0だが、エーブラムズ氏によると企業に本当に影響を与えるのは「ネットワーク集合知ともいえるコミュニティとロングテールに代表される新しいビジネス」だ。特にエーブラムズ氏は、Web 2.0について「参加がキーワードだ。コミュニティの中で自分たちの体験を交換できる」と説明した。Web 2.0のビジネスについても「情報の伝播が早くなっている」と語り、コミュニティの貢献を指摘した。

 Web 2.0におけるコミュニティの代表格は「YouTube」。ユーザーの自由なビデオ投稿によって巨大なメディアに急成長した。エーブラムズ氏は「今後は企業向けサイトでも同じような発想のWebサイトが出てくるのでは」と話し、企業におけるコミュニティの活用について「規模の大きさを利用して長年の問題を新しい方法で解決できる」「先進的なユーザーを活用してイノベーションを引き起こす」などを説明した。

 ただ、Web 2.0は「従来の企業にとっての好機にも脅威にもなり得る」(同氏)。脅威に直面しているのはマイクロソフト。その一例として同氏は「Microsoft Word」と、グーグルが買収したWebベースのワープロ「Writely」を挙げた。マイクロソフトが莫大な技術開発費をかけて開発したソフトウェアに近い機能が、SaaSとAjaxなどのWeb 2.0技術によってWeb上に再現され、無償で提供されている。

 近い機能のソフトウェアが無償で公開されることで、「マイクロソフトに対する人々の心が変わってきている。Microsoft Officeはどうして必要? と思う人が増えている」とエーブラムズ氏は指摘した。Writelyはブログで大きな話題になった。ブログを中心とするコミュニティが人々の心変わりを促進した面もある。同氏は「グーグルはマイクロソフトにとって脅威だ」と話した。

 一方、エンタープライズ・サーチの分野では「マイクロソフトは積極的に投資し、APIを公開するなどコラボレーションに力を入れている」(同氏)。グーグルは製品は用意しているものの「実はあまりチャレンジしていない」といい、マイクロソフトの優位を認める。マイクロソフトがインターネット登場後に戦略を大きく変更したことを説明し、「同じような変化が期待できる」と同氏は話した。

 エーブラムズ氏はガートナーの提言として「Webプラットフォーム技術とリッチ・クライアント技術が企業の中心的なアプリケーションになるよう移行計画を進めるべき」「従業員の年齢構成が若い企業であれば、Web 2.0技術を雇用を含めて大いに活用すべき」「Web 2.0コミュニティは新製品のフィードバックに利用すべき」「企業の広告活動は既存メディアよりも、むしろブロガーを意識した情報発信をすべき」などを挙げた。

(@IT 垣内郁栄)

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