調査結果から分析
人月見積もりでは生産性は上がらない、IPAが警告
2006/11/29
情報処理推進機構(IPA)は11月29日、2006年度「情報処理産業経営実態調査」の結果を発表した。この調査は「情報処理産業界の財務、経営状況の現状を把握し、今後の経営の参考に供する」(IPA)ことが目的で、1978年以降毎年実施されている。28回目となる今年は従来のアンケート調査に加えてヒアリングも実施し、労働生産性の分析などを行った点が特徴だという。アンケートでは861社から有効な回答が得られた。ヒアリングは25社に対して行った。
2005年度の情報処理産業全体の売上高は0.8%の増加で、伸び率は鈍っているものの2003年度から連続でプラス成長している。経常利益も22.6%の増加で、増収増益となった。ヒアリングの結果でも、経営状況は昨年と比べ良好であるという意見が多く聞かれたという。
生産性に関しては、ソフトウェア業界において、ソフトウェアプロダクト販売分野の売上高が高い比率を占めている企業ほど労働生産性が高い傾向が見られた。逆に受注ソフトウェア開発の売上高が高い比率を占めている企業ほど労働生産性は低い。ヒアリング内容を含めた要因分析結果として、IPAは「ソフトウェアプロダクト販売は低コストでの再生産が可能であり、高付加価値を生み出しやすい。受注ソフトウェア開発は(業界が)多重下請け構造になっており、必ずしも効率的ではない。加えて人月単位での管理が一般的であり、労働生産性の向上が売上高増加につながりにくい」としている。
情報処理産業経営実態調査研究会委員長を務める東京大学大学院教授の元橋一之氏は、今回の報告書で「下請け構造が生産性の低さにつながっていることがはっきりした」と語る。「ソフトウェアのアウトプットを計るのは難しく、現状多いのはコスト積み上げ型の何人日という形での見積もり。ソフトウェア工学は進歩しているが、生産性を上げても金額が低くなってしまう。このジレンマが生産性の上がらない要因。それがまさしく浮き彫りになった調査」だという。
こうした伝統的ともいえる問題点の改善に関して、IPAは2004年のソフトウェア・エンジニアリング・センター(SEC)の設置に言及し、効率的なソフトウェア開発への取り組みが徐々に成果を出しているとした。
今回はそのSECの認知度や、ITスキル標準の活用度などについても調査している。全体の33.9%の企業がSECを「知っている」、66.1%が「知らない」と回答。ITスキル標準を「活用済み」もしくは「検討中」と答えた企業は全体の60%強で、ある程度活用が進んでいるとの認識だ。また活用済みの企業の方が、予定なしの企業よりも労働生産性が高くなっているという。
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