アクセンチュアが日米企業比較
「オフショア先=下請け」と考えると失敗する
2006/12/07
電子情報技術産業協会(JEITA)の委託を受けてアクセンチュアが行ったオフショア開発についての調査で、日本企業のオフショア開発についての活用能力の低さが明らかになった。日本企業が国内ベンダやシステムインテグレータ(SIer)との間で行ってきた、あいまいな契約や丸投げ体制をそのままオフショア開発に持ち込もうとしたことが、活用能力の低さにつながっている。調査を担当したアクセンチュアの通信・ハイテク本部 エグゼクティブパートナー 田中陽一氏は「オフショア開発を成功させるための要因の半分は自社の問題だ」と指摘し、ユーザー企業側の意識改革や体制整備を訴えた。
調査のきっかけは日米ユーザー企業のオフショア開発の利用度の違い。米国企業がIT投資額の12%をインドのオフショアベンダに向けているのに対して、日本企業が中国のオフショアベンダに投じる額は3%。田中氏は「国内企業と米国企業の間でオフショア開発の活用能力や活用プロセスに差があるのではないか」と考え、調査した。
低い日本企業のオフショア開発能力
調査したのはオフショア開発を活用している日米企業で、それぞれの回答の平均値を比較した。回答数は日本が26件、米国が9件。ハイテク機器、ソフトウェア業界の大企業が中心だ。アクセンチュアはオフショア開発のステージを4つに分けた上で、詳細な項目について活用度をレベル1〜5で設定した。回答全体をまとめると米国企業の平均がレベル3.5なのに対して、日本企業の平均は2.8で、日本企業がオフショア開発を米国企業ほどには有効に活用していないことが分かった。
ステージ1の全体方針・基準では特に「オフショア先の選定」で日米の差が大きかった。オフショア先の選定について米国企業の半数以上は7〜9項目の基準を設定しているが、日本企業は半数が基準なし。7〜9項目の基準を設定しているケースは10%未満だった。田中氏は「限られた観点だけでの判断や、組織としての基準なしに開発案件ごとの都度判断を続けていても、オフショア開発の活用レベルは向上しない」と指摘した。
オフショア先は下請け?
ステージ2の計画・契約では「役割分担」や「仕様変更ルール」「要件定義」などで日米の差があった。オフショア開発の契約時に要件定義や基本仕様書を取り決めているのは、米国企業が100%なのに対して、日本企業は70%程度。残りの日本企業は、「場合によっては取り決める」や、「取り決めない」と答えている。国内ベンダやSIerを相手にしたプロジェクトではあいまいな契約でも許されることがあるが、オフショア開発ではトラブルの元になる。
米国企業は開発の上流工程からオフショア先や、オフショア先とのコミュニケーション役になるブリッジSEを巻き込んでいることも多い。田中氏は「米国企業がオフショア先をパートナーと考えるのに対して、日本企業は下流工程での下請け企業として捉えている傾向が見られる」と話した。
プロジェクトの外部監査や評価の実施についても日本企業は米国企業に劣っていた。外部監査は米国企業の8割程度が実施。対して、日本企業は1割程度だった。評価についても日本企業の多くは、評価自体を行わなかったり、プロジェクトごとにその都度実施していたが、米国企業はプロジェクト終了後だけでなく、進行中にも評価をしたり、当初予想と結果の分析を行うなど、次につながる評価を行っていた。田中氏は日本企業について「各案件から得られた知見を基に基準・プロセスを組織的に高度化させていく仕組みがない」と指摘し、「国内企業が米国企業に比べてオフショア開発能力レベルが低い原因の1つと考えられる」と語った。
一方、調査した日本企業でもオフショア開発能力レベルが極めて高い企業もあり、CIOのリードがオフショア開発プロジェクトの成否を決めそうだ。
基準、標準プロセスの策定と定着を
日米比較からは離れるが、オフショア開発の体制も成否に影響するようだ。ユーザー企業とオフショアベンダの間に取りまとめ企業としてSIerが入っている場合と、ユーザー企業がオフショアベンダと直接契約している場合では、SIerが入る場合のほうが開発能力の平均値が高かった。
田中氏はオフショア開発を利用する日本企業への提言として、オフショア開発全体についての社内基準や標準プロセスを作ることや、その基準、プロセスに対して必要なリソースを割り当てて定着を図ること。オフショア先とのコミュニケーションを計画立てて確立し、オンショア側チームと、オフショア側チームとで対等な協業関係を作ることなどを挙げた。さらに取りまとめ企業としてSIerを活用することも得策と説明した。
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