ガートナー担当者が「個人的に」予測
大手企業のWritely採用は未来永劫ない、マイクロソフトは安泰
2006/12/08
「Writelyを日本の大手10社が採用することは未来永劫ないだろう。個人的にはWeb 2.0の潮流がマイクロソフトの将来を脅かすことはないと考えている」。米ガートナーのアプリケーション リサーチ ディレクター チャールズ・エーブラムズ(Charles Abrams)氏は、「Web 2.0はマイクロソフトを脅かすのか」との記者の質問に「ガートナーのリサーチではなく、個人的考えだ」と前置きしたうえで、こう断言した。Web 2.0と呼ばれる新サービスが次々現れているが、マイクロソフトは巨人のままなのか。
エーブラムズ氏は11月29日の講演で、「マイクロソフトに対する人々の心が変わってきている。Microsoft Officeはどうして必要? と思う人が増えている」と指摘し、Web 2.0がマイクロソフトに与える影響を説明していた。コンシューマ事業ではマイクロソフトはグーグルなどWeb 2.0企業の影響を受けると指摘。しかし、マイクロソフトのエンタープライズ事業は「いくつかの試練を受けることはあるかもしれないが、Web 2.0のメリットを享受するほうが多い」と見る。
エーブラムズ氏の判断の根拠は、マイクロソフトがWeb以前、Web 1.0時代に膨大な資産を築いたからだ。「マイクロソフトはWindows OS、Office、Internet Explorerという宝石のようなソフトウェアを持っている」と指摘。そのうえでマイクロソフトの今後の戦略を「IEをフロントエンドにしてサーチエンジンの機能を持たせるだろう。セマンテックに検索できるようにし、メッセージングもIEで行えるように統合する」と見る。
政府の規制がMSの足かせに?
マイクロソフトが展開するWebサービスをIEの基本機能に統合し、Windowsと連動して利用できるようにすれば、企業で課題となっている情報量の急激な増大にも、検索機能の提供などで対応できる。Officeの機能も何らかの形で統合されるかもしれない。ただ、圧倒的なシェアを誇るIEやWindowsの基本機能に、Webサービスを組み込むことが独占禁止法上、許されるかは別問題。エーブラムズ氏は「もし政府が許可すればだが」と付け加えた。マイクロソフトは過去にセキュリティ問題で批判を浴びたことがある。独占禁止法やセキュリティ対応がマイクロソフトのWeb 2.0対応の足かせになる可能性はあるだろう。
欧米ではマイクロソフトをはじめ、IBM、SAP、オラクルの4社の頭文字を取り、「MISO」と呼ぶことがある。いずれもソフトウェアの巨人で、OSやOSに近いミドルウェアから上位の業務アプリケーションやクライアントアプリケーションまでフルスタックで持つ。エーブラムズ氏はこのMISOについても「個人的意見だが」としたうえで「2010年までに4社のうちで大きな合併が起きる可能性がある」と予測する。しかも、それは「Web開発の必要性がトリガーになるだろう」という。つまり、Web技術を強化する、もしくは出遅れてしまった企業などが再編のきっかけになるというのだ。
エーブラムズ氏は「4社はいずれもWeb上の巨人」と語るだけで、それ以上の予測はしなかった。グーグル、アマゾンなどWeb専業企業の動向も注目されるが、エーブラムズ氏は「iTunes Storeを持つアップルコンピュータにも注目すべきだ」として、テクノロジ企業、コンテンツ企業を巻き込んだ再編が起きる可能性を示唆した。
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