今後はSaaSにも注力していく

ビジネスオブジェクツ、簡単で安価な中小企業向けBIを年明け投入

2006/12/27

 BI(ビジネスインテリジェンス)にとって2006年は激動といえる年だった。大手オラクルやSAPが参入し、マイクロソフトも本格参入を表明。2007年第3四半期にもハイエンドBI製品「Office PerformancePoint Server 2007」を国内投入すると発表している。今回は古くからBI市場をけん引しているビジネスオブジェクツのシニアバイスプレジデント兼アジア太平洋・日本地域ジェネラルマネージャー キース・バッジ(Keith Budge)氏に、日本におけるBIの状況を聞いた。

日本版SOX法ではデータの正確性がカギ〜バッジ氏

バッジ氏写真 米ビジネスオブジェクツ シニアバイスプレジデント兼アジア太平洋・日本地域ジェネラルマネージャー キース・バッジ氏

 バッジ氏は日本のBIの状況について、「日本におけるBIの利用は、次のレベルへ達しようとしている」と説明した。次のレベルとは、ミッションクリティカルな業務において、企業内のデータをリアルタイムに扱えるようになることを指す。11月に同社が発表した「EIM(Enterprise Information Management)」製品などの登場によって、このようなリアルタイムに対応したBIが可能になったという。業種別では、金融業において利用が進んでいるものの、公共部門ではまだまだであるなど、業種ごとの格差が大きく存在しているとした。

 また、同氏は「従来、BIというと“シニアマネージャクラス以上の経営層の人間にのみ関係のあるソフト”という認識が強かった。しかし、現在ではマネージャクラスやサブマネージャクラスへと格段に裾野が広がっている」と分析。市場が確実に広がっていることを強調した。

 同氏は、11月に実施基準案(ガイドライン)が公開された日本版SOX法についても解説。「米SOX法でもそうだったが、日本版SOX法においても“データが正確である”ということの証明がとても重要になってくる。その点、当社ではそのことを証明するEIMに投資しているので、日本版SOX法においても重要な役割を担うことができるだろう」と説明した。ビジネスオブジェクツでは、データの信頼性をいかに担保するかという点について、同社の製品やコンサルティング活動を通じて企業に訴求していくという。

来年2月にも、中小企業向けに簡単で安価なBIソフトを投入

 現在、日本においてBIの活用は大手企業が中心だ。ビジネスオブジェクツの顧客も大手企業が多いという。中小企業において、BIが利用されていない理由について同氏は「経営層にBIの必要性や有効性が訴求できていない。『BIってなに?』という声がまだまだ多い。まずは、BIを知ってもらうという初歩的な啓蒙活動から行っていく必要がある。この点については、パートナー企業とも協力していきたい」と説明した。

 同社では、こういった中小企業向けに、簡単で安価なBIソフトの投入を2007年2月をめどに計画しているという。この点についてバッジ氏は、「一番重要なのは値段だ。また、中小企業ではIT部門がない会社も多い。従って、次に重要なのは簡単に使えるということだ。2007年に投入する中小企業向け製品では、この2点に注力した」と語った。

 また、BIのフロントエンドツールとして多く使われているExcelを機軸としてBI市場への参入を図るマイクロソフトに対しては、「マイクロソフトは、フロントエンドツールとして圧倒的シェアを持つExcelを土台にハイエンドBI製品を投入しようとしている。われわれBIベンダがトップダウン形式でBIを導入するのに対して、ボトムアップでの普及を目指している。こういった普及方法によっていままでリーチできなかった層にもBIを理解してもらえることは良いことだ。当社製品は完全な分析情報を提供できるという点で差別化できると考えている」とコメントした。

パッケージとSaaSを両立させたい

 ビジネスオブジェクツはSaaS対応も強化している。2006年1月には、セールスフォースと提携し、セールスフォースのAppExchangeにおいて、同社のレポートツール「Crystal Reports XI」を提供している。この点についてバッジ氏は、「SaaS対応を強化している。SaaSというビジネスユニットも作った。Crystal Reportsはすでに7000ユーザーに使われている。SaaSの普及に関しては、欧米に比べて日本は遅れているので、2007年はまだ普及段階とはいえないだろう。おそらく2008年から普及し始めると思う」とコメントした。

 また、SaaSとパッケージ版の比率の変化については、「今後、確実にSaaSやASPでの提供形態が増えるだろう。おそらく、SaaSと伝統的なパッケージ商品は50対50くらいになるのではないか。ただし、日本では情報漏えい問題などの関係上、“データを外に出したくない”というニーズから、SaaSを敬遠する顧客も確実に存在する」と分析。今後の日本ビジネスオブジェクツの目標に関しては、「ワールドワイドと比較して、日本は倍くらいのスピードで成長してほしい。年率換算では5〜7%の成長を期待している」と語った。

(@IT 大津心)

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