PCとテレビの新しい関係
PCは「テレビへ接続」か「テレビと接続」か
2007/01/16
米国では、IT企業が技術革新によって新たなコンシューマ・エレクトロニクス市場を切り開いている。日本はもともとコンシューマ・エレクトロニクスを開発していた企業が情報技術産業に参入したという経緯がある。米国、日本ともに、目指す場所は同じだが、アプローチが違う。このアプローチの違いが、市場の存在感に大きな影響を与えている。アップルとソニーはその典型である。
マイクロソフトの新OS「Windows Vista」の登場を1つの契機として、新たなコンシューマ・エレクトロニクス市場の到来が予感される。そのなかで、オーディオ/ヴィジュアル機器の先進企業の矜持(きょうじ)をかけて、ソニーは捲土重来(けんどちょうらい)の思いを新製品に込めている。
パーソナル・コンピュータVAIOの新カテゴリ「Extension Line by VAIO」として、ソニーは「AUDIO LINE」と「VISUAL LINE」という2つの製品ラインを展開する。
AUDIO LINEで発売するのは、ワイヤレスLAN(IEEE802.11b/g)を搭載したWi-Fiオーディオ「WA1」である。PCにストックされた音楽を無線LAN経由でデジタルスピーカーに飛ばし、好きな場所で聴けるというライフスタイルを提案している。無線LANの環境がない場合でも、USB端子が付いた「ワイヤレスアダプター」をPCに挿せば、ドライバと専用ソフトウェアが自動的にインストールされ、簡単に無線LAN環境が構築できる。SonicStage CPとiTunes、Windows Media PlayerでCDからPCに取り込んだ楽曲の再生が可能。独自開発の24bitDSPが高音質を実現するという。価格は3万5000円前後(オープン価格)。
VISUAL LINEからは、家庭用のテレビとHDMIケーブル1本で接続するテレビ接続型コンピュータ“テレビサイドPC”「TP1」を発売する。円形の筐体(きょうたい)が珍しい。大型の液晶テレビとHDMIケーブルで接続し、録画したハイビジョンコンテンツを高画質のままテレビ画面で観賞するなどの利用方法が考えられる。テレビのコンテンツをPCにストックし、Web技術を活用しながら家庭で楽しむ、というのがソニーが提案するテレビ接続型コンピュータの基本コンセプトだ。デジタルチューナー「DT1」を接続すれば、地上波デジタル放送の受信も可能である。
アップルもテレビとPCを接続するための機器「アップルTV」を発売したが、基本コンセプトがソニーと違う。つまり、アプローチが違うのである。アップルは、インターネットを介してダウンロードした映像コンテンツ(主に映画)をテレビに映し出すという利用方法を優先する。一方、家電メーカーでもあるソニーは、テレビコンテンツをPCにストックして、改めてテレビで映し出すことを(まずは)想定している。シンプルに言うと、アップルが「(PCを)テレビへ接続」するという立場をとり、ソニーは「(PCが)テレビと接続」されるという立ち位置を保っているということになる。
両社の目指す場所はおそらく同じだが、それぞれのアプローチの違いが勝負の分かれ目になるだろう。次世代コンシューマ・エレクトロニクス市場における競争はいま始まったばかりだ。
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