RFIDでの利用も可能

異システムを連携させると「JAL手ぶらサービス」が高速化する謎

2007/02/01

 NTTデータら5社が提唱する、IDをキーとしてさまざまなITシステムを連携できるサービス基盤「IDコマース基盤」を利用して、複数社にまたがる航空手荷物の搬送業務を効率化する実証実験が2月1日から開始された。「JAL手ぶらサービス」を対象に、日本航空と宅配業者、空港宅配業者が個別に発行する預け荷物IDを相互に連携させて効果を検証する。

 JAL手ぶらサービスとは、海外旅行に行く際に機内に預ける荷物を自宅で宅配業者に預け、到着空港で受け取るサービスだ(2004年7月スタート)。成田空港、関西空港、中部国際空港発のJAL国際便(ただし、グアム、ハワイなどを含む米国路線や米国経由路線は保安上の理由で不可能)に搭乗する客であれば、荷物1個当たり500円で利用できる。

実験写真 JALの担当者が宅配業者が利用しているバーコードを読み込んでいるところ

 今回の実証実験(2月1日〜28日)では、いままで宅配業者、空港宅配業者、JALがそれぞれのコード体系で運用していた手荷物IDを、IDコマース基盤に準拠する形で連携させ、バックヤード業務の効率化を図る。特徴的なのは、各社がすでに構築している業務システムを変更することなく、IDを相互に連携させている点だ。なお、今回の実験ではコードキャリアにバーコードを利用しているが、IDコマース基盤の仕組みそのものはRFIDタグでも利用可能だ。

 JALの担当者によると、いままでは宅配業者によって配達されてきた荷物の伝票から氏名や搭乗便名を目視で読み取り、利用客の予約名簿とマッチングさせて空港宅配用IDを発行していた。さらに、空港宅配用IDは、JALのチェックインシステムに手作業で入力されていた。

実験写真 この自動チェックインシステムで搭乗券を発行するとバッゲージクレームタグも同時に出てくる

 今回の実験では、宅配業者が利用しているバーコードから氏名、日付、搭乗便名、予約番号を読み取り、自動的に空港宅配用ラベルを発行すると同時にチェックインシステムにもデータが登録される。また、利用者は専用Webサイトや携帯電話からIDを入力して、宅配業者に預けた荷物のトラッキングが可能になる。

 成田空港発のJAL国際便が1日に取り扱う機内預け荷物は1万個以上だが、手ぶらサービスの取扱いは1日当たり100個超に過ぎなかった。JAL担当者によれば、「これまでは、お客さまの手ぶらサービス利用数が増えれば増えるほど、カウンター業務にボトルネックが発生してしまうというジレンマに陥っていました。複数の異なるIDを連携させることで、時間の短縮や入力ミスが削減できると予測しています」とのことだ。

 IDの相互連携を行うことでバックヤードだけでなく、利用者もメリットを得られるという。例えば、「従来のやり方ではバッゲージクレームタグ(機内預け荷物の引取証)をお客さまにカウンターまで取りに来ていただいてましたが、自動チェックインシステムでボーディングパス(搭乗券)を発行していただくタイミングで同時にお渡しできるようになります」(JAL担当者)が挙げられる。

 NTTデータ技術開発本部の松本隆明本部長は、「JALの協力を得られたことで、IDコマース基盤の航空手荷物業務の適用効果を実験することが可能になった。次世代航空サービスの柱になるものとして期待している」と語った。IDコマース基盤検討会(NTTデータ、富士通、NEC、日立製作所、東芝テック)では、複数企業/複数システム間にまたがるID情報流通、IDコマース基盤と既存サービスとの連携、端末管理の一元化の検証、評価を行っていく。

(@IT 岡田大助)

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