機会損失を減らして売り上げ増を目指す

RFIDを使った家電のライフサイクル管理を実証実験

2007/02/13

 ヤマダ電機やビックカメラなどの量販店において、RFIDタグの利活用を模索する実証実験が実施された。この実験では、メーカー(セットメーカー)から消費者までの流通経路(動脈流)だけでなく、保守や修理など製品が消費者の手に渡った後の“静脈流”をも含んだ製品ライフサイクル全体を対象としているのが特徴だ。

 実験は、ソニーや東芝、日立製作所、松下電器産業といった大手家電メーカーなど13社が参加している「家電電子タグコンソーシアム」が中心となって、店舗内の在庫ロケーション管理と保守・修理の2つの領域で実施された。なお、利用されたRFIDシステムはEPCglobal仕様にのっとって構築されている。

 ヤマダ電機(テックランド新座店)の店頭およびバックヤードで実施された公開実験では、炊飯ジャー約60種、DVDプレーヤー約50種、iPod約15種(関連アクセサリーを含む)の計3000アイテムを対象に、JANコードをベースにした識別番号「SGTIN」を割り振り、入荷検品から店頭でのリアルタイム在庫確認を行った。

iPod写真 iPodの店頭モックに13.56MHz帯RFIDタグを付けてあるので、RFIDリーダにかざすだけで、自動的に在庫を確認して「お持ち帰りカード」を発行する

 炊飯ジャーとDVDプレーヤーにはUHF帯のRFIDタグを採用し、商品の外箱に貼付した。iPodについては、13.56MHz帯RFIDタグが付けられた店頭モックおよび専用ICカードをRFIDリーダにかざすことで、自動的に在庫を確認し「お持ち帰りカード」を発行する仕組みを展開した。

バックヤード写真 搬入された商品はゲート通過時にまとめてリーダに読み込まれるので、到着したばかりの商品を販売することも可能だ

 ヤマダ電機の実験の狙いは、「売れるものをお客さまの目の前に!」を目標とした品出しの徹底と、在庫をバックヤードに確認しにいく時間を省略してストレスを与えない顧客満足度の向上だ。公開実験中、店頭では欠品になっていた炊飯ジャーの在庫を店員がPDAで確認して、ちょうど搬入口に到着したばかりの商品を販売することに成功したという。

 一方、ビックカメラ(有楽町店)での公開実験では、保証書の裏面にRFIDタグを貼付し、製品販売後の修理対応に利用するものだ。製品が消費者の手に渡った後の保守・点検作業といった、いわゆる静脈流でのRFID利用は世界的にも珍しい取り組みである。なお、実験そのものは、ビックカメラ以外のヨドバシカメラ、エディオンでも実施された。

ビックカメラ写真 ビックカメラはEPC ISで管理しているため、修理受付時にRFIDタグを読み取ることで、ユーザー名や販売日などを即時照会できる

 ビックカメラの実験では、プラズマディスプレイ10点、DVDレコーダ100点および交換部品として内蔵型ハードディスク20点を対象として、RFIDタグに日立製作所のμ-Chip Hibiki(UHF帯)を採用した。

 製品の販売データなどは、EPC IS(EPC関連情報サービス)で管理されているため、修理受付時にRFIDタグを読み取ることで、ユーザー名や販売日などが即時照会できる。また、修理が終わった製品を受け渡すときにも、ハンディ型リーダでRFIDタグを読み取ることで、すばやく該当製品を見つけ出せる。

ビックカメラ写真 RFIDを読み取ると、このようなユーザーステータスが表示される

 一方、ユーザーが電話で修理状況を問い合わせた場合には、該当製品がどのステータスにあるのかをリアルタイムに報告できる(インターネットを使ってユーザー自身が照会することも可能)。

 このように、静脈流でのRFID利用によって、受付業務の効率化やリードタイムが短縮できるほか、顧客満足度の向上が期待されている。RFIDタグを使って個品レベルでの管理が可能になることで、不具合品の流通過程での回収などにも威力を発揮するとのことだ。

(@IT 岡田大助)

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