国内でもさらなるパートナー、開発者の取り込みが鍵
「競合はWindows Mobileではなく独自OS」、シンビアン社長
2007/03/08
「シンビアンは9年かけてケータイ向けOSを作ってきた。ケータイ向けOSは、そう簡単に作れるものではない」――。3月9日に行われた会見の席上でシンビアン代表取締役社長の久晴彦氏は、マイクロソフトが同社のケータイ向けOS、「Windows Mobile」搭載端末の拡販に本腰を入れていることに対して(参考記事)、今のところ脅威ではないとの見解を示した。「シンビアンには全世界で300社以上のパートナーや5万人の開発者が作るオープンなエコシステムがあるが、Windows Mobileはまだ、そうした環境を作るに至ってない。むしろ、ライバルだと思っているのはノキアやモトローラが持っているプロプライエタリな独自OS。数だけ見ると市場では独自OSが多い」(久氏)。
ワールドワイドで73%の高いシェア
高機能端末の増加に伴い、Symbian OSの採用実績は右肩上がりだ。日本市場では2005年第3四半期から1年間で約185%の端末出荷増を記録し、富士通、三菱、シャープを中心に計53機種がSymbian OSを搭載している(3月8日現在)。NECとパナソニックが携帯電話端末にLinuxを採用していることから、日本のスマートフォン市場におけるSymbian OSの市場シェアは60%弱にとどまるが、ヨーロッパでのシェアは90%を超えるという(「スマートフォン」の定義は同社によるもので、日本市場で言えば高機能端末も含まれる)。
北米は他地域とシェア構成が大きく異なり、BlackBerryを擁するRIMやマイクロソフトのお膝元ということもあってWindows Mobileが高いシェアを持つが、ワールドワイドで見ればスマートフォン市場でSymbian OS搭載端末は73%の高いシェアを持つ。1998年の創業以来、シンビアンはSymbian OSを累計で約1億1000万台の端末で出荷しているが、そのうち約半分に当たる5170万台は2006年出荷分と、3G端末の立ち上がりを追い風に実績を伸ばしている。2006年の売り上げは1億6520万ポンド(約370億円)と前年同期比で44%増となっている。
“ハンバーガーモデル”でケータイを作り上げる
高機能化する携帯電話端末だが、Symbian OSの機能拡張は、あくまでもコア部分に集中するという。久氏は「われわれはハンバーガーモデルと呼んでいるが、下のハードウェアから上位のアプリケーションまでをレイヤに分けるとすると、われわれはハンバーグの部分、OSのコアに注力する。パンの部分に当たる、ハードウェアの抽象化レイヤや、UI、ミドルウェア、アプリケーションはパートナーに任せ、一緒に良いケータイを作るというモデル」と説明する。変化の激しい多様な無線通信規格のサポート、高度なセキュリティモデルの提供など技術革新への対応課題は多く、「コア部分だけでも完成ということはない」(久氏)という。
こうしたモデルのため、Symbian OSは特定のUIを持たない。NTTドコモならMOAP、ノキアをはじめとする海外ベンダの端末ならS60やUIQと、現在3種のUIを採用したSymbian OS搭載端末が市場にある。
Symbian OSはミドルウェアやアプリケーションに対してもPCの世界に近いオープンなプラットフォームとなっているが、課題は慢性的な開発者不足だ。Symbian OSではC++での開発が基本となるため、「例えばSourceForgeにSymbian OS向けプロジェクトはほとんどなく、Symbian OS用バイナリとなると、もっとない」(ディレクターテクニカルコンサルティング 山田貴久氏)。こうした背景から同社は今年1月に、C開発者が慣れ親しんだPOSIXをSymbian OSでサポートすると発表。第1四半期中にはPOSIX関連ライブラリのベータ版提供を開始する。これによりオープンソースか業務アプリケーションであるかを問わず、既存のアプリケーションを容易にSymbian OS上に移植できるようになるという。
Symbian OSのグローバル性を利用して欲しい
端末出荷数が伸びているのとは反対に、過去3年でコンサルティング収入は1710万ポンド(約3800万円)から1070万ポンド(約2400万円)へと4割近く減っている。これは端末メーカー各社に開発ノウハウが蓄積された結果だという。
こうした開発者不足解消の施策や採用実績の増加により、開発者コミュニティが活気づくかどうか。久氏は「Symbian OS向けのアプリケーションは、少しの変更で海外に持って行ける場合が多い。日本のソフトウェアベンダには、そうしたSymbian OSのグローバル性をもっと利用して欲しい」と語った。
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