年内にもZENworks Orchestratorをリリースか
ノベルの考える仮想化技術の未来
2007/03/19
仮想化技術により、データセンターにおけるサーバ集約が進んでいる。しかし、集約したサーバ群をいかに統一的に管理・運用するかという課題は、まだこれからの取り組みが期待される分野だ。
ヴイエムウェアの「VMware Infrastructure 3」は同社が“リソースプール”と呼ぶ多数のサーバ群のリソースを有効に活用するための管理ツール、「VirtualCenter」を提供する。リソースプールから、ポリシーや負荷に基づき、仮想マシン環境にリソースを動的に割り当てる。
米ノベルも「SUSE Linux Enterprise」におけるオープンソースの仮想化ソフトウェア「Xen」で同様の取り組みを進めており、年内にも「ZENworks Orchestrator」の名前で製品をリリース予定だ。
ZENworks Orchestratorは、エージェントベースでリソースの検出や作業負荷の評価、タスクのスケジュール設定を行う管理ソフトウェア。Pythonベースのジョブ定義言語とXMLベースのポリシー定義言語を用いる。
タスクとは、例えばMySQLサーバ。ZENworks OrchestratorのGUIツールで、物理サーバからなるクラスターにタスクをドロップすると、仮想マシン上でOSが起動し、MySQLが走り出す。このタスクに対する負荷が高くなってくると、Orchestrationサーバは、あらかじめ定義されたポリシーに従ってMySQLが稼働するOSのインスタンスを次々と起動する。
ZENworks Orchestratorでは、ポリシーの設定によって、特定の物理サーバをリザーブしておき、常に重要なタスクを割り当てられるようにすることも可能だ。また、重要なタスクが投入された場合に、優先順位の低いタスクを自動的に削除するといったことができる。
OSを仮想化環境に最適化
ヴイエムウェアの独擅場にも近かった仮想化サーバの統合管理という領域へ足を踏み入れるノベルだが、ノベルの強みは仮想化環境におけるOSにまで手を入れようしていることだ。
米ノベルは、昨年11月2日に米マイクロソフトとの提携を発表し(参考記事)、Xenの仮想環境で動くWindows向けのドライバを開発している(参考記事)。XenにはゲストOSに変更を施さずに仮想化を実現する「完全仮想化」と、ゲストOSのAPIやドライバを、ハイパーバイザの存在を前提とした仮想環境用のものに変更してゲストOSを動かす「準仮想化」の2つのモードがある。完全仮想化ではゲストOSがプロセッサに対して発行する特権命令をハイパーバイザでトラップする必要があるため、どうしてもパフォーマンスが犠牲となる。一方、準仮想化では、OSやドライバをハイパーバイザの存在を前提に書き直す必要があるが、その分オーバーヘッドは少なくなる。ノベルは現在、仮想化環境で動くWindows向けに、特にパフォーマンスが問題となるネットワークドライバとブロックデバイスドライバを、マイクロソフトと共同で開発している。
仮想化環境向けディストリビューションを提供
さらにノベルは、Linuxディストリビューションについても仮想化を念頭に置いた再構成を検討している。同社はディストリビューションを「pDistro」と「vDistro」の2種類に分けて考える。“p”は「physical」(物理的)、“v”は「virtual」(仮想的)を指す。つまり、物理サーバ向けディストリビューションと、仮想サーバ向けディストリビューションを分けましょう、ということだ。
物理サーバ上で動かすカーネルは、ハイパーバイザを稼働させることに特化する。一方、仮想サーバ上で動かすカーネルは、例えばMySQLに特化したものなど、目的によって違うものを起動したほうがリソースの消費量は少なくて済み、システム全体のパフォーマンスは上がる。仮想サーバ向けのディストリビューションは、各種サーバやミドルウェアといったアプリケーションスタックの整備に注力することができるだろうし、物理サーバ向けディストリビューションにはハードウェアのネイティブサポートの充実が期待できる。
ヴイエムウェアによる完全仮想化技術で始まった仮想化ソリューションだが、今後、仮想化が当たり前の存在となれば、OSやディストリビューションのあり方も変わってくるのかもしれない。
関連記事
情報をお寄せください:
最新記事
|
|