伊藤忠商事、エキサイトと資本提携

FON、日本での普及に足がかり

2007/03/29

fon01.jpg フォン・ワイヤレス創業者でCEOのマーティン・バルサフスキー(Martin Varsavsky)氏

 WiFiコミュニティプロジェクト“FON”を展開する英FON WIRESS Limited(以下、フォン・ワイヤレス)は3月29日、3月に実施した第三者割当増資の出資企業の一部として、日本の伊藤忠商事、エキサイト、DGインキュベーションなどの名前を明らかにした。伊藤忠商事、エキサイトらは、国内ではフォン・ジャパンと連携し、共同でFON利用拡大の事業を展開する。フォン・ワイヤレスは今回の増資で、米グーグル、スイスIndex Ventures、米セコイアキャピタルなどからの再出資も合わせ、総額1000万ユーロ(約15億7000万円)の出資を集めた。

 FONは2005年11月にスペインで誕生したWiFiコミュニティプロジェクト。FONメンバーは設置した無線LANのアクセスポイントをほかのFONユーザーに開放することで、メンバー間で世界中のアクセスポイントを共有できる。日本では2006年12月に現地法人フォン・ジャパンが立ち上がり、3月26日現在までに1万8000ユーザー、約9500のアクセスポイントを獲得している。

約1800万人のエキサイト会員はFONが利用可能に

fon02.jpg 伊藤忠商事 宇宙・情報・マルチメディアカンパニー 情報産業部門 情報産業ビジネス部 ITプロジェクトビジネス課 プロジェクトマネージャー 瓜生裕明氏

 今回の提携によりエキサイトは、エキサイトIDを持つ約1800万の会員にFONアクセスポイントを提供する。エキサイトの会員は世界各地のアクセスポイントを有償で利用できるようになる。エキサイト会員からの収益はフォン・ワイヤレスとエキサイトで分け合う。こうした大規模なユーザーベースの一括獲得はフォン・ワイヤレスでも初めてという。

 伊藤忠商事は、今後の国内でのFONの普及・拡大に当たり「FONのビジネスモデルには注目してきたが、日本ローカルのマーケットで成功するには、いくつかハードルがある。そうしたハードルは、総合商社の総合力で解決できると判断した」(伊藤忠商事 宇宙・情報・マルチメディアカンパニー 情報産業部門 情報産業ビジネス部 ITプロジェクトビジネス課 プロジェクトマネージャー 瓜生裕明氏)とし、ISPやキャリアとの提携交渉や、公共の場へのアクセスポイント展開の支援、日本の実情に合った決済システムの開発などを支援していく。フォン・ジャパンCEOの藤本潤一氏によれば、すでに国内の大手ISPとも「ポジティブな話し合いを進めており、春か夏ごろには(提携について)発表できる」という。フォン・ジャパンではこれまで、BB.excite、isao.net、インターリンクなど一部のISPがサポートを表明していたものの、接続回線の他ユーザーとの共有はISP事業者からの反発が懸念されていた。

 一般にISPの約款には、契約者以外の第三者との接続サービスの共有は禁じられているが、「FONをサポートするISPであれば、ユーザーは世界中でWiFiのアクセスポイントを利用できるため、FONへの対応はISPにとってはユーザーサービスの向上による競争力強化となる。また、自宅で接続サービスをほとんど使わないユーザーでも、世界中でWiFiのアクセスポイントが利用できるとなれば回線契約を維持するため、解約率の低下にもつながる」(バルサフスキー氏)といったFONのメリットをISPが受け入れ始めた格好だ。欧米では、観光都市などの地方自治体が公共の施設へのFON導入を進める事例も出てきているという。

FONの国内普及のハードル

 瓜生氏によれば、日本国内でのFON普及のハードルの1つは「口コミによる普及に限界がある」こと。例えばFON同様に口コミでの普及が進むSkypeを例に取ると、「台湾は日本の5分の1しか人口がないが、Skypeユーザーの数はほぼ同じ。オフィスで使っているユーザーも多い」(瓜生氏)といい、国民性の違いが足かせになる可能性を指摘する。ホームユーザーへの浸透を進めてきたFONだが、伊藤忠グループでは今後、「カフェなどランドマークになるようなロケーションへのアクセスポイントのセットアップをしていくのも、われわれの役割」(同氏)という。

 決済手段についても、クレジットカードが主流の欧米に比べてプリペイド決済などが多く、「Webマネーなどのプリペイドカードの過半数はコンビニで現金購入されている」(瓜生氏)という違いがあるため、日本のユーザーに適した決済手段の提供が欠かせない。

 FONユーザーによる、他の利用者への課金制度の国内導入についても現状では解決策が見えていない。FONコミュニティには、無償で自分のアクセスポイントを公開する“Linus”ユーザーと、それらのアクセスポイントを有償で利用する“Alien”ユーザー、自分が設置したアクセスポイントで接続料金を徴収する“Bills”ユーザーの3種類がある。Billsユーザーについては電気通信事業法の規制があるため、「日本国内でのBillsユーザーを始める気は当面ない」(フォン・ジャパン会長 千川原智康氏)としている。

既存の公衆無線LANサービスとは相補的な関係

 すでにFONのアクセスポイント数はほかの公衆無線LANサービス事業者のアクセスポイント数よりも多い。ワールドワイドで見ても、国別で見ても、スペイン、フランス、ドイツ、日本などで最大手となっている。その一方、ホームユーザー主体で広がってきたFONは、住宅地を中心にカバーエリアを充実させてきた。このため、ホテルや駅、空港、商業地といったエリアを中心にアクセスポイントを展開してきた既存の公衆無線LANサービスとは、カバーエリアの点で相補的な関係にある。前出の瓜生氏によれば、公衆無線LANサービスを展開する国内の事業者の一部とも、すでに具体的な提携交渉を始めているという。もし提携が実現すれば、公衆無線LANサービスの認知自体が一気に高まる可能性も出てきた。

 FONの利用にはアクセスポイントの追加設定や認証といった面倒がないため、人の家に遊びに行った場合のアクセスラインとしての魅力も大きい。中でも、ゲームやPDAなどのガジェット系のメーカーからの期待は大きく、バルサフスキー氏は、ソニーや任天堂、パナソニックといったメーカーにFONのスポンサーになってもらい、代わりにFONがすぐに使える状態でガジェットを販売するというモデルも考えられるとしている。

夏にはルーターのファームウェアを“Web2.0”に!?

 各国ごとに異なる規制や既存の事業者との利害関係の中で、さまざまな試みをFONは展開している。

 同社が提供する無線LANアクセスポイント“La fonera”のメジャーバージョンアップも予定しているようだ。フォン・ジャパンCEOの藤本潤一氏によれば「FONユーザーが頻繁に利用するダウンロードとアップロードについて、Web2.0的な機能を入れる予定」という。具体的な機能の詳細についてはコメントは得られなかったが、P2Pやコミュニティ型のサービスをソフトウェアレベルで組み込む可能性も考えられる。

 また先日報じた通り(参考記事)、ルーターに外付けでアタッチする拡張アンテナ「La Fonntenas」の国内提供も認可が下り次第、開始を予定している。商業地区で高層階に設置されるアクセスポイントでも、4階程度であれば地上に電波が届くため、日本の都市部では期待される。

 さらに現在、FONではBluetoothやHSDPAへの対応も進めている。Bluetooth対応の携帯電話を使ってパソコンでインターネットに接続するか、HSDPA対応のUSBドングルを使ってインターネットに接続すると、そのパソコン自体がFONの無線LANアクセスポイントとなる機器だ。ドイツの携帯電話キャリアのデビテルは、すでにHSDPAを使ったFONの接続サービスを提供しているという。

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(@IT 西村賢)

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