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ネットでも公私を分離したい
2007/04/02
先週の@IT NewsInsightのアクセスランキング1位は「検索結果にブログが出ると『がっかり』が2割以上」だった。ヤフーは検索サービス「Yahoo!検索」に検索結果からブログ記事を省く「ブログフィルタ」を追加した。あらかじめ「filter:blog 花見」などと検索コマンドを指定することで検索結果からブログを除外できるほか、検索結果にブログ記事が一定以上含まれる場合に、検索結果画面の下部に「ブログを含めずに再検索」のリンクを表示する。
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ネットの世界は玉石も公私も混在
検索して個人が書いたブログが出てくるとがっかりする人は多いようだ。個人がブログで書く文章は信憑(ぴょう)性の低い主観的な記述や、調べたい事柄についての部分的な記述が多く、ときにはほとんど無関係な情報しか出てこないから、というのが理由だろうか。ブログが流行する以前から、「個人のWebページはノイズだ」という持論を展開する人は少なくなかった。
技術系の調べ物をしていると、むしろ個人の書いているインストールメモや設定ファイルにも役立つ情報が豊富にあるように感じる。購入前に商品などの評判を知るときにも、ブログの感想は役立つことが多い。しかし、例えば「東京裁判」や「オランダ」について基本情報を確認しようと検索して、個人の感想文や旅行記しか出てこなかったら、確かにがっかりするだろう。
結局、検索結果がフラットに提示されることが問題なのだろう。検索結果一覧をスキミングすれば、ドメイン名や文体からブログかどうかは一目瞭然だが、目的や用途によって検索オプションをもう少し柔軟に変えたい。インターネットは、玉も石も、公的なものも私的なものもの、すべてが同じインフラに載っている。それは一面ではすばらしいことだが、作業時に領域を分けて考えたいというニーズは今後増していくだろう。
今回ヤフーが始めたブログ除外検索というのは、ブログ専用検索と合わせて、私的な情報空間を分ける方法を提供したということだ。mixiやVoxのように、私的なコミュニケーション空間を限定する動きと合わせて、インターネット上の公私空間の分離と呼んでもいいかもしれない。
コミュニケーションもモードによって分離したい
8位に入った「Webページで知人にバッタリ会えるソフトウェア」からも似たような問題が見えてくる。「わくらわ」と名付けられたWebブラウザの拡張機能をインストールすると、同じページを見ている人がアイコンとして画面の下に表示される。
その後、ブックマークやブログを見ていると、このソフトウェアについて「なんか嫌だ」という否定的な反応が少なからずあった。人に行動を見られないほうが気楽だからだろう。
これは記事に書かなかった私が悪いのだが、実はわくらわは良く考えられたソフトウェアで、ワンクリックで「ひとりになりたい」という“ステルスモード”に切り替えられる。誰かにバッタリ会ってもいいなという気分のときだけ「だれかにあいたい」に切り替えればいい。
こちらも向こうも何もかも透明に見えてしまうと窮屈だし、どの情報にもフラットにアクセスできてしまうと、ノイズが大きすぎてウンザリしてしまう。インターネットは何もかも結び付けてしまうので、一度はくっついたものも、場合によっては分離しないと疲れてしまう。
同様の問題はメッセンジャーにもある。ほとんどのメッセンジャーはユーザーがオンライン状態かどうかをほかのユーザーに知らせる機能を持っている。これも見方によっては嫌な話で、そのため、たとえオンラインであっても他のユーザーから見えなくなる機能がほとんどのメッセンジャーに実装されている。「取り込み中」「離席中」など、さまざまなステータスを選べるようにもなっている。
問題は、休日に飛んでくるワーカホリックの上司からのインスタントメッセージだ。寝癖をなでながら、ゆっくりコーヒーをすすっている休みの朝に、資料を送れといわれるのは誰でも嫌だ。メッセンジャーのアカウントも公私で区別するべきなのだろうが、かつてネット黎明期に公的なメールアドレスで私的なやり取りをしていたのと同じで、メッセンジャーは今のところ公私分離が、あまり進んでいない分野のように思う。マルチアカウントを自然に使い分けられる機能か、バディリストの登録ユーザーをグループ化して、あるグループには常にオンライン状態を見せ、別のグループには明示的に指定した場合だけオンライン状態を知らせる機能など、相手によって異なる距離感を保てるツールに進化してほしいと思うのは、私だけだろうか。
距離が詰まりすぎると息が詰まる。メールの開封通知機能が広く利用されていないことにも、まったく同様に「あまり距離を詰められたくない」という心理と、それを忖度(そんたく)した「勝手に距離を詰めようとするのは相手空間への領空侵犯だ」という送り手の気遣いがあるからだと思う。
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