調査で判明
JUAS幹部がため息、新テクノロジへの関心を失うIT部門
2007/04/04
日本情報システム・ユーザー協会(JUAS)は4月4日、2006年度の「企業IT動向調査」を発表した。IT投資が堅調に回復。増収増益の勝ち組企業に追いつこうと、業界2位、3位の企業のIT投資も活発になってきた。
ユーザー企業のIT部門802社と経営企画部門805社にアンケート調査を実施した。主要ユーザー企業にはインタビュー調査も実施し、結果をまとめた。ユーザー企業のうち、77%は株式市場に上場している。
2006年度はIT予算を増やした企業が多かった。増加させた企業の割合から減少させた企業の割合を引いたDI値は26で、2005年度の17から大きく伸びた。2007年度は21と予測していて、IT予算は引き続き伸びそうだ。
2006年度のIT投資について、JUASの常務理事 原田俊彦氏は「勝ち組に追いつこうとする2位、3位グループが積極的に投資をしている」と分析する。増収増益企業のDI値が27なのに対して、増収減益企業のDI値は36、減収増益企業は32だ。“負け組”企業の逆襲が始まったといえるだろう。
IT部門がIT投資で解決したい中期的な経営課題は「業務プロセスの改革」がトップ。「経営の透明性の確保」も3位に入っていて、原田氏は「日本版SOX法の施行を前に経営の透明性の確保が急浮上している」と分析する。個別のシステムでは「生産・在庫管理システム」「販売管理システム」「セキュリティ強化」などへの投資を挙げる企業が多かった。
新テクノロジの半数に「関心がない」
IT投資が伸びる中、JUAS幹部が表情を曇らせるのはIT部門の新テクノロジへの関心のなさだ。「Web 2.0」や「SOA」「ITIL」など話題となっている9のテーマについて関心や導入の計画をIT部門に聞いたところ、約半数のテーマで、「あまり関心がない」「よくわからない」が回答の半数を超えた。
半数以上のIT部門が「あまり関心がない」「よくわからない」と答えたテーマは「ビジネスプロセスアウトソーシング」「エンタープライズアーキテクチャ構築」「オフショア開発の活用」「グリッドコンピューティング」「ITIL活用」。JUASのISC 永田靖人氏は「7割くらいの関心があるかと予想していたが、実際は最も関心があったテーマでも6割程度だった」と語った。
「関心はあるが未検討」「検討中」「すでに導入・実施済み」と6割のIT部門が答えたのは「Web 2.0の活用」。「ビジネス・インテリジェンス」「オープンソースソフトウェアの活用」「SOA」も関心度が5割を超えた。永田氏は「IT部門の新テクノロジへの関心が薄れているともいえるが、関心を持たないといけないと義務感があるIT部門もある。企業で取り組みが難しいと思われるWeb 2.0の関心度が高いのは、関心を持たないといけないと考えるその心情を反映しているのだろう」と話した。
日本版SOX法に「民の声」
JUASは今回、日本版SOX法についての調査も行った。実施基準案が公開されていた2006年11月末の時点で、16%の企業が「すでに全社レベルの体制を構築済み」と回答。「現在、構築中」は38%で、約半数の企業が推進体制の構築に着手している。従業員1000人以上の大企業では73%の企業が推進体制の構築に着手している。
ただ、日本版SOX法対応の予算を算定している企業は全体の29%に過ぎず、70%の企業は「必要工数、費用を算定していない」。JUASの専務理事 細川泰秀氏は「悪いことをしていないことを証明する方法は別にあると考え、日本版SOX法に対応しても意味がないと考える企業が多いとも読み取れる。民の声が意外に正しいこともある」と語った。
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