[ECM & BI Conference 2007開催]

情報マネジメントは「守り」と「攻め」をバランスよく

2007/04/12

ボストン コンサルティング グループ写真 ボストン コンサルティング グループの井上潤吾氏

 情報マネジメント(管理)には、攻めと守りの2つの側面がある。ボストン コンサルティング グループの井上潤吾氏は両者の違いを次のように説明する。

 「攻めの情報マネジメントの目的は、売り上げや利益の獲得にある。あるいは、中・長期的な視野でみた企業の成長。守りの情報マネジメントの目的は、リスクを管理して企業の存続を図ることだ」。顧客の購買履歴を用いたアップセルやクロスセルが前者の例として挙げられる。後者では、コンプライアンスやセキュリティがそれにあたる。

 情報マネジメントにおける攻めと守りのバランスがうまくとれている企業はそれほど多いとはいえない。(守りの情報マネジメントは)各事業の戦略、業務プロセス、オペレーション、人材育成といった企業の基盤部分を見直す絶好の機会であるが、短期的な視野で捉えた業績に対して影響を与えるものではなく、一見すると負担増とさえ考えられがちである。しかし、攻めに転じた後で着実に効いてくるものだ。

 守りの情報マネジメントに必要なポイントを井上氏は以下のように指摘する。「経営陣の姿勢を(社内に向けて)コミュニケートすること」「結果を目に見える形でモニタすること」の2点だ。

 経営陣の姿勢を社内に浸透させるには、経営幹部からミドルマネージャ、一般社員という風に滝が落ちるように情報を行き渡らせる方式(カスケード方式と呼ばれる)がある。また、コミュニケーションの頻度や回数にも配慮する必要がある。最低限必要な直接コミュニケーションの延べ回数は、理解させたい相手の人数のルート、という格言がある。例えば、100人の人間を説得したいなら、100のルート=10回は繰り返して話を聞かせるべきである。

 結果を目に見える形でモニタすることも守りの情報マネジメントについては重要。返品件数をモニタすることを決めた途端、全国の支店で返品件数が激減したというケースもあると井上氏がいうように、業務のプロセスや、プロセスで得られる結果を可視化するだけでも企業体質の向上につながる。

 一方、攻めの情報マネジメントで必要なのは「事業戦略から考えた情報マネジメントのあるべき姿を追求すること」「情報マネジメントを実行する組織力、人材力を向上させること」の2点だと井上氏はいう。

 事業戦略は「戦略策定」「システム構築」「実行・実現」「結果」に分けられる。経営者が期待するのは、主に戦略策定と結果の領域だが、その間のシステム構築、実行・実現の領域との橋渡しがスムーズに行われなければ、策定した戦略は、期待した結果に結びつかない可能性が大きくなる。「経営陣とIT部門の間で(戦略の)全体像の共通認識を持って議論する」ことが大切だと井上氏は指摘する。

(@IT 谷古宇浩司)

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