3次元デスクトップ環境も統合
Java版セカンドライフは仮想オフィスを目指す
2007/05/12
「Project WonderlandはJava版のセカンドライフですかと良く聞かれますが、それは違います」。米サン・マイクロシステムズでProject Wonderlandに携わるポール・ビルン(Paul Byrne)氏はプロジェクトの説明に当たって、まず最初にそう述べた。Wonderlandは、仮想3次元世界を歩き回ってほかのユーザーと何らかの接触をするJavaで書かれたプログラム――、ちょっと聞いただけでは確かに「Java版セカンドライフ」だが、目指している「世界」がずいぶん違う。
セカンドライフとの違いを書いた方が、Wonderlandの目指す方向性が分かりやすそうだ。
1つめの大きな違いはセカンドライフが1つの大きな世界であるのに対してWonderlandのほうは「virtual worlds」と複数形で語られていること。これはWonderlandがオフィスの仮想化を目指しているためだ。LANやネット上の掲示板、SNSと代替、それも個別の組織での利用を想定している。「例えばサンではロシアにも開発拠点がありますが、遠く離れているので電話会議やメールでやり取りします。しかし、現実のオフィスでは掲示板に張り紙があったり、コーヒー売り場で雑談したりという交流があるものです」(ビルン氏)。日本なら喫煙ルームでの会話が重要な情報交換の場であったりするのと似たような話だ。現実のコミュニケーションを、直接的、明示的な会話や対話だけと見なしてオンライン化した場合に失われる、より“環境的”なコミュニケーションを引き出す場として、3次元の仮想世界は適している。
ソファに腰掛けてVoIPで話しているアバターたちの会話は通りすがりに音声として聞こえてくるので、自然と小耳に挟むことになる。こうした微妙な情報の流通は、リアルなオフィスでは案外重要な役割を果たしている、という発想がWonderlandの背景にある。在宅勤務がより広く普及してきたときには、Wonderlandのような仮想世界に“出勤”するようになる、ということはないだろうか。
ビジネス目的での利用を想定しているため、アプリケーションの共有が初めから3次元世界で統合されている。「アプリケーションは単にビットマップを貼り付けているわけではありません。Webブラウザの前に立てば、ふつうにWebブラウジングができます」(ビルン氏)。自分の背丈より高い画面を使い、複数人でおしゃべりしながらWebブラウジングするだけでも、かなり新鮮な体験に違いない。アプリケーションの3次元処理には「Project Looking Glass」の成果が採り入れられている。自分の部屋の壁には3次元デスクトップ環境が用意されており、その中でアプリケーションを操作できる(参考記事:3Dデスクトップ環境「Project Looking Glass」を試してみた)。つまり、アプリケーションの共有とかドキュメントの共有といったことが、同僚の部屋に行くという現実世界のメタファーによって直感的に実現できるようになるわけだ。
セカンドライフとの最大の違いは、仮想世界やオブジェクトの振る舞いをJavaで自在に変更・拡張できることだ。ちょうど、mixiやMySpaceといったSNSが広く普及した後に、企業向けのカスタマイズ可能なSNSが出てきたように、エンターテイメント色の強いセカンドライフの後に、ビジネス用とを想定したWonderlandが「カスタマイズ可能なセカンドライフ」として登場してきたといった格好だ。
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