IDCが提案
クライアントPCをバーチャル化する3つの方法
2007/05/24
「長期的にはバーチャルクライアントが勝者になる」。米IDCのクライアント&ディスプレイ プログラムバイスプレジデントのボブ・オドネル(Bob O'Donnell)氏は5月24日のIDC Japanのイベントで講演し、クライアントPCの将来をこう予測した。セキュリティ保護や運用管理コストの増大からクライアントPCは仮想化され、サーバによる一元管理が進むというのがオドネル氏の考えだ。
シンクライアント、ブレードPCなどクライアントPCのリソースを仮想的に一元管理するソリューションが今後拡大する理由は、セキュリティや運用管理コストの増大だけではない。サーバのパフォーマンスが向上し、複数のクライアントPCのリソースを集約できたり、人々が特定のクライアントPCに縛られずにどのPCでも自分の電子メールを読み書きし、仕事をしたいと思うようになるなど「人が変わってきている」(オドネル氏)ことも背景にある。
IDCが示す3つのモデル
しかし、クライアントPCを集約するソリューションは複数あり、市場は混乱気味。オドネル氏はIDCが考える将来のバーチャルクライアントの3つのモデルを示した。モデル1はVMware ESX Serverなどを使ってサーバを仮想化し、複数の仮想環境を用意する。1つの仮想環境に1ユーザーを割り当てて、アプリケーションを稼働し、実際のエンドユーザーのPCにはRDPやICAなどのプロトコルでイメージを送る。シトリックスなどが展開するシンクライアントソリューションのサーバ側を仮想化し、構成の自由度を高めたモデルといえるだろう。
モデル2はサーバ側でアプリケーション・ストリーミングのソフトウェアを稼働し、エンドユーザーの権限に応じてクライアントPCにアプリケーションを配信する方法。アプリケーション自体はクライアントPCで稼働するため、エンドユーザーはアプリケーションを従来と同様に利用できる。RDP、ICAが苦手とする動画などのアプリケーションにも対応できる。
モデル3は、1と2を足した方法といえる。サーバを仮想化し、ユーザーごとに環境を割り当てる。1の方法ではこの環境上でアプリケーションを稼働し、イメージをエンドユーザーに届けるが、3ではアプリケーション・ストリーミングのサーバを別に立てて、アプリケーションをこの仮想環境に配信する。アプリケーションの配信を受けた仮想環境はイメージだけをエンドユーザーのPCに送る。
モデル3では複数の仮想環境があってもアプリケーションのバージョンを同期させることが可能で、管理が容易になる。だが、「現実を考えると大変複雑」(オドネル氏)な仕組みで、実現は簡単ではない。
2010年にはデスクトップPCの25%がバーチャルに
どのバーチャルクライアントのモデルも、導入にはエンドユーザー部門の抵抗が予想される。エンドユーザーはPCの利用法を変える必要があるからだ。ユーザーが現状のPCを手放さず、導入が遅れる可能性もある。「理論的には優れていても実装は別の話し」(オドネル氏)なのだ。
それでもIDCは2010年には米国の企業向けデスクトップPCの25%が、何らかのバーチャルクライアントになっていると予測する。ワールドワイドでは18%。HDDレスPCがクライアントとして最も使われ、ブレードPC、シンクライアントが続くと見ている。オドネル氏は、Windows Vistaが登場し、ノートPCの出荷台数がデスクトップPCを超えて伸びていることを指摘。「企業がまったく新しいクライアントPCのアプローチを考えるには、よい機会だ」と話した。
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