ノキアシーメンス、小型WiMAX基地局をデモ
「WiMAXは日本では地方から普及し、都市部に流れ込む」
2007/05/29
ノキアシーメンスネットワークスは5月29日、日本で本格的な営業活動を開始したと発表した。同社は昨年6月に携帯電話メーカーでフィンランドのノキアと通信機器メーカーの独シーメンスが出資比率50:50で設立を発表した合弁会社で、グローバルな営業活動は、すでに4月1日から開始している。合併前の事業規模から見込まれている2006年度の売り上げは171億ユーロ(約2兆8000億円)。同社は無線ネットワークで世界第2位、オペレータ・サービスで同2位、有線ネットワークで同3位となるなど通信インフラベンダとしてトップ3の地位を占めている。
同日開かれた記者会見の席で、4月に日本・韓国市場担当に就任したマイケル・クーナー氏は「150カ国で600社以上の顧客。弊社の交換機を通じて10億人以上が“コネクト”されている」と事業規模を概観した。
基地局設置費用はW-CDMAの基地局の約半分
ノキアシーメンスの事業はネットワーク機器、サービス全般にわたるが、記者会見では同社の次世代無線ネットワークインフラ製品のデモンストレーションが行われた。次世代無線ネットワークとして同社はWiMAXとLTE無線アクセス(Long Term Evolution)の2つの系統の製品群を持つ。
同社のWiMAX基地局製品については、すでに米スプリント、英パイペックス、南北アメリカやスペインで事業を展開するオービテルといった大手通信キャリアと契約を締結済みで、今年末から来年初頭にかけて同社製品を利用した通信キャリアがWiMAXサービスの提供を開始するという。スプリントは2008年4月に商用サービスを開始し、2008年末に1億加入を目指すとしている。
基地局で、もっともサイズがかさばるモジュールであるアンプ開発に投資を重ねた結果、大幅な小型化に成功。「小型でクレーンも不要。W-CDMAの基地局の半分の費用で設置が可能」(ノキアシーメンスネットワークス 代表取締役 小津泰史氏)という。3Gネットワークと異なり、端末からコアネットワークまで、すべてIP化されていることも新規に基地局を設置する場合にコスト負担が小さくて済む。こうしたことからWiMAX事業では既存の携帯電話事業者よりも、新規参入事業者が増えることが予想されている。
WiMAXには固定無線通信方式(FWA)と移動体対応の方式の2種類があるが、小津氏は、地価が安くFWAサービスのニーズがある地方での展開が都市部での展開より先行するのではないかと見る。「ADSLや光接続といったブロードバンド接続が届かない地方に対して、デジタルデバイド解消の手段としてWiMAXは普及し、その後、都市部に流れ込むのではないか」(小津氏)。固定通信方式であれば70Mbps、移動体対応の方式では21Mbpsをほかのユーザーとシェアする形になる。
3GオペレータにはLTEでアップグレードパスを提供
ノキアシーメンスでは、WiMAX事業と同時に、既存の3Gオペレータ向けにはLTE無線アクセス・ソリューションも提供する。LTEは無線変調方式にOFDMA(Orthogonal Frequency Division Multiple Access)を用い、MIMOと併用することで最大150Mbps超のダウンリンク速度を実現する。LTEは現在、大手キャリアが参加する業界団体で標準化が進められており、年内にも標準化作業が終了。2009〜2010年には製品が市場に登場するという。ノキアシーメンスはW-CDMA、HSDPA、CDMAといった通信方式を提供するキャリアに対してアップグレードパスを提供し、電波利用効率のよいネットワークへの移行を促すという。
LTEとWiMAXはともにブロードバンドの通信速度を提供するモバイルアクセスという点で似ているが、この点について小津氏は「WiMAXはどちらかといえばデータ通信重視。法人ユーザーのように音声サービスの品質が重要だという場合には既存の携帯電話キャリアを選択する。ちょうどADSL事業者がVoIPサービスを提供していても固定電話を選択するのと同じ」と両技術の棲み分けについての見解を述べた。
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