ジュニパーが上海で初のテクノロジイベント開催
キャリアの帯域を占有する主役がPtoPから動画に変わる?
2007/05/31
中国上海の静安寺は、三国志で有名な呉の孫権によって建立された著名な仏教寺院だが、上海の中心地にあることから現在は高層ビルに囲まれている。米ジュニパーネットワークスは5月31日、静安寺近くのホテルにおいて、同社初となるテクノロジ関連イベント「J-Tech Forum」を開催。基調講演は、同社の戦略・企画担当副社長 ジュディ・ベニンソン(Judy Beningson)氏がジュニパーの戦略におけるトピックについて語った。
トピックは「マスカスタマイゼーション」「帯域」「OPEX」(運用コスト)「IPが国家的インフラになった」「新しいビジネスモデル」の5つ。1つ目の、マスカスタマイゼーションとは「顧客ごとの個別の要求に応えつつ、それに対して大量(マス)生産と同じような低コストで実現しよう」というもの。現在のネットワークは、まさにマスカスタマイゼーション化していっているとベニンソン氏は強調する。
従来のネットワークは、Webサーバやメールサーバなどから来るデータを受動的に受け止めている“静的”な利用方法が中心だった。一方、現在は「使いたいときに使いたいものを、使いたいだけ使う」といったユーザーの要求が強まっており、ネットワーク側のリアルタイム性が重要になってきている。このことから、マスカスタマイゼーション化が必要になってきているとした。ネットワークにおける具体的な影響としては、「MPLS(Multi Protocol Label Switching)とシングルサインオンが確実に広がるはず。また、固定とモバイルのネットワークの統合も必ず起こる」(ベニンソン氏)と予測する。
2つ目のトピックは「帯域」だ。ネットワークインフラにおける帯域の拡大は非常に深刻な問題で、年間80%〜100%程度の割合で成長しているという。カナダのSandvine社の調査によると2006年のトラフィックの内訳はPtoPが54%で1位、2位はWebブラウジングで32%、3位はニュースグループで5%だった。この点について、ベニンソン氏は「2006年時点では、オンライン動画が流行っていなかったので数%に過ぎなかったが、今年や今後、オンライン動画の占める割合は確実に増えていくだろう。YouTubeの流行などによって、年々トラフィックが2倍になっていく可能性もある。これに対して、ネットワーク側は『どうやって速くしていくか?』が非常に重要になる」と指摘。その解決策として、オンライン動画向けに回線を最適化していくことが重要だとした。
3つ目のトピックは、オペレーション上のコストである「OPEX」。この点については、「地味な問題だが、OPEXを下げることが重要だ。さまざまな取り組みをすることで実現していきたい」(ベニンソン氏)とした。4つ目のトピックは、IPネットワークがいまや国家インフラになっているという点だ。米国政府が「人生の重要な決定事項におけるインターネットの利用動向」について2000年に調査したところ、「車を買うときにインターネットを利用して情報収集した」と答えた米国民は、車購入者6250万人のうち2900万人。「インターネットが車選択に重要な役割を果たした」と答えた人も購入者の27%(1700万人)に上ったという。学校選択(全3950万人)においては、利用した人が2700万人、重要だと答えた人が45%(1700万人)だった。
このように、国家レベルのインフラになっているIPネットワークにの課題ついて、ベニンソン氏は、「国家インフラといしては、まだまだネットワークの信頼性が低い。もっともっと可用性を上げなければならない。99.999999%のような9が多く並ぶ数値を目指さなければならない。また、カトリーヌのような災害に対して、ディザスタリカバリの体制をもっとしっかりと構築し、耐性を上げなければならない。例えば、固定電話の受話器を上げても使えなかったら、多くの人は『何か大事故や大災害があったのでは?』と考えるだろう。その位の信頼性をIPネットワークにも持ってもらえるようにしていきたい」と語った。
最後のトピックは、「新しいビジネスモデルの登場」だ。ベニンソン氏は2005年7月に米国の携帯キャリアであるスプリント(Sprint)が米ディズニーと提携し、Disneyブランドの家庭向け携帯電話サービス「Disney Mobile」を開始したケースを挙げ、「この提携は、従来からDisneyのコンテンツを放送していた事業者には厳しい問題だ。この提携で、携帯電話やインターネットを通じて、Disneyのコンテンツが提供されるからだ。これからは、このようなサービスプロバイダと放送事業者はライバル関係になっていくだろう」と説明した。
このように、インターネットの普及によっていままで存在しなかったビジネスモデルが創出されたケースでは、GoogleやYahoo!が代表例だという。GoogleやYahoo!は、売り上げの30%弱をパートナーやアフィリエイターとシェアしているという。例えば、米Googleは2006年第3四半期の売り上げ27億ドルのうち、8億2500万ドルをAOLのようなパートナー企業へ支払っている。同じく、米Yahoo!も2006年第3四半期の売り上げ16億ドルのうち、4億5900万ドルをCNNやESPNのようなパートナーへ支払っており、「このようなビジネスモデルはいままでなかったものだ。今後も新しいビジネスモデルが必要だろう」(ベニンソン氏)とコメントした。
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