ユーザー側から見た課題は
「R25」サイトをPostgreSQLで構築、リクルートはOSSをこう考える
2007/06/05
リクルートのFIT システム基盤推進室 フェデレーションオフィサーの米谷修氏は6月5日、「PostgreSQLカンファレンス2007」で講演し、同社が展開するネットサービスへのPostgreSQLの採用状況を説明した。フリーペーパー「R25」「L25」のWebサイトなどで実験的にPostgreSQLを使っているが、「負荷が高いサービスではまだ怖くて使えない」という。ユーザー側からみたPostgreSQLの課題とは何だろうか。
R25、L25のWebサイトは月約1億2000万のページビューを誇る。リクルートはほかにもローカルサーチサイトの「スゴイ地図」や地域検索情報サイト「ドコイク?」などでPostgreSQLを採用している。リクルートは4年前にもPostgreSQLの採用を検討したが、当時の機能ではアーカイブログが取れず、「もしサービスが落ちたときに戻せない可能性があった」ために採用を見送り、Oracle Databaseを使うことになった。
あらためてPostgreSQLの採用を決めたのは1年前で、バージョンは8.1。4年前の問題が解消され、システムインテグレータによる検証でもよい結果がでたことから採用した。
基幹サービスにはOracleを利用
一部サービスでPostgreSQLの利用は始まったが、「リクナビNEXT」や「住宅情報ナビ」など同社の基幹となるサービスはOracle Databaseで構築している。米谷氏によると、PostgreSQLに欠けるのは「運用機能」「高負荷対応」「冗長化対応」。運用管理機能では、Oracleと比べると「周辺ツールの充実度が違う」といい、チューニングに必要な稼働情報の取得などが十分にできないことを指摘した。リクルートはPostgreSQLとOracleの機能比較レポートを作成しているが、そのレポートによると「Oracleを100点とするとPostgreSQLは40点くらい」という。
高負荷対応では、PostgreSQLの非同期レプリケーション機能である「Slony-I」の利用を検討したが、Oracleからのアプリケーションのポーティングがうまく行かずに断念。別の冗長化機能である「PgPool2」を使っているが、システムの一部にとどまり、本格展開はしていない。「高負荷になるサービスではクラスタ構成で負荷分散ができずに困る」という。
ベンダ側に製品検証を任せることができる商用データベースと異なり、オープンソースのデータベースはユーザー側がリードして検証する必要がある。その分、工数がかかることになり、場合によっては低いコストというメリットを打ち消してしまう。米谷氏は「商用ミドルウェアとのバランスを考えていくことが重要」と話し、「商用ミドルウェアとオープンソースのミドルウェアをWebサイトの特性に応じて使い分けていく」と説明した。
新規事業インフラにPostgreSQL
オープンソースのデータベースでそれだけ検証が必要になるのは、通常のサービスインフラと同様のサービスレベルを実現しようとしているからだ。リクルートは現在、新規事業開発を簡単に行えるWebの共通インフラをPostgreSQLで構築している。このインフラを使って提供されるサービスはいわば玉石混淆のベータ版で、どれだけが商用サービスとして大成するかは分からない。この共通インフラを構築するに当たっては「通常のサービスレベルは保証できないことを社内で受け入れられた」といい、「社内でのPostgreSQL利用のブレークスルーになった」と話した。スタートアップのサービスはPostgreSQL、サービスが成長したらOracle Databaseに移行という利用方法が広がる可能性がある。
リクルートが計画している新規事業開発は、「体制」「開発手法」「開発ツール」の3つを用意し、自由なサービス開発を促す。体制では「個人や5人くらいのソフトウェアハウスから優秀な人を集めた」といい、短納期の開発手法や、手法に対応した開発ツールも社内で開発したという。従来と比べて2倍の開発スピードと3分の1のコストを目指す。
米谷氏がユーザーとしてPostgreSQLに期待するのは「コモディティ化してほしい」ということだ。リクルートがApacheなどを使う場合は検証作業はほとんど行わず、スムーズに導入できる。しかし、PostgreSQLではまだ検証が必要だ。リクルートはオープンソースコミュニティに対しての協力も考えていて、米谷氏は「貢献できることを教えてほしい」と話した。
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