【インタビュー】米ノベル マーカス・レックス氏
ノベル幹部が明かすMSとの提携の意義
2007/06/11
昨年末の11月2日、長年敵対的な関係にあった米ノベルと米マイクロソフトが突然の業務提携を発表した。この提携によって何が変わるのか、また今後、ノベルのLinuxディストリビューション「SUSE Linux Enterprise」はどう変わっていくのか、米ノベル バイスプレジデントのマーカス・レックス(Markus Rex)氏に話を聞いた。
――提携の狙いを改めて教えてください。
レックス氏 現在、ユーザー企業の多くはWindowsとLinuxの両方をシステムに抱えています。これらの2つは相互運用性に問題があり、その点を改善してほしいというニーズが強かったので、対策を取ろうと考えました。
――マイクロソフトは5月半ばに、Linuxを含むオープンソースコミュニティが同社の特許235件を侵害しているというコメントを出しました。法的リスクについて教えてください。
レックス氏 今回の提携における重要なポイントでもあるのですが、知的財産に関してマイクロソフトとノベルは互いに訴訟を起こさない、互いの顧客を訴えないということを合意しています。もし不安があるのなら、ノベルからLinuxを買えば安心だということです。
――逆にいえば、ほかのベンダーのLinuxディストリビューションはリスクがあるということですか?
レックス氏 マイクロソフトが出してきたコメントに対して、われわれは肯定も否定もしません。ほかのディストリビューションに法的リスクがあるがどうかについては、ノベルはコメントする立場にありません。
OSSコミュニティの中には、今回の提携に関して不満の声も多くありました。私個人としても、マイクロソフトと15年も敵対的な関係にあったので受け入れるのが困難な部分もありました(笑)。しかし、合併後の顧客からの反応は良好です。顧客はベンダがともに協力し、統合されたソリューションを望んでいるのです。
――相互運用性向上に関わる具体的な活動は?
レックス氏 4つのエリアにフォーカスしています。まず、現在大きなトレンドとなっている「仮想化」です。Windowsのハイパーバイザ上でLinux、逆にLinuxのハイパーバイザ上でWindowsが準仮想化で動くように、また、準仮想化環境でWindowsが最適化された状態で動くように開発を進めています。今週末発表予定のSUE Linux Enterprise Server 10 SP1でも仮想化のパフォーマンスを改善しました。
もう1つはマネジメント。シームレスにWindowsとLinuxを管理できるよう注力しています。3つ目はディレクトリとID管理の相互運用の実現です。Windowsを導入している企業ユーザーのほとんどはActive Directoryを使っているので、ノベルのeDirectoryやIdentity Managerとの相互運用を可能にします。どちらか一方に統合するというのではなく、相互にシステムをスイッチできる形でサポートします。
相互運用性向上で注力している4点目は、オフィス文書形式の互換性確保です。これは多くの国の官公庁や自治体で問題になっていることで、マイクロソフトのOpen XMLと、OpenOfficeがサポートするODFについて互いにサポートします。
――互いにサポートとは?
レックス氏 XMLトランスレータで相互変換という形になりますが、目標は100%の完全互換です。2つのフォーマットはオープンですし、どちらか1社が単独で作業するわけでもありませんから、そうした高い互換性も実現可能だと思います。
――ディストリビューションの中長期的な目標は? 例えばレッドハットはミドルウェアを充実させ、業務システムのソリューション企業になると宣言しています。
レックス氏 われわれはLinuxディストリビューションに含まれていないアプリケーションを数多く持っています。ですから、今後も「管理を簡易にする」ということと、「ベストな仮想化環境を提供」するという点で質を高めていくだけで、ディストリビューション自体を新たなレベルに上げるという必要はありません。
ただ、仮想化の普及が進むと、ディストリビューションのあり方が変わることになります。現在、Linuxは利用目的によって2つの部分に分けて考えることができます。1つはハードウェアをサポートする部分、もう1つはアプリケーションを動かす部分です。
仮想化によって、この2つを切り分けることができるようになります。ハードウェア担当の部分は、常にアップデートをして新しいデバイスをサポートしていく。一方、その上で稼働する仮想環境中のゲストOSでは、安定したソフトウェアの実行環境を提供する。互いに影響を与えずに一方だけアップデートが可能になります。
ただ、こうしたことを実現するには、たくさんのツールを変更しなければならないので、いつ頃にそうした分離ができるかという具体的なことは、今の段階ではお話しできないのですが。
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