政府調達の基本指針が7月運用開始
日本国政府はオープンソースを公平に扱う――IPAイベントから
2007/06/29
中央省庁など日本の政府機関で7月以降、オープンソースソフトウェア(OSS)の採用が増える可能性がある。総務省が中心となってまとめた「情報システムに係る政府調達の基本指針」が7月1日に運用開始されるからだ。指針はITシステムの採用について、「Microsoft Wordまたは同等以上」などの特定の製品名ではなく、「オープンな標準に基づく要求要件」を、調達仕様書に記載するよう求める。従来はいわば特定製品の決め打ちだったが、これからはOSSも同じ土俵に上がることになる。
分割調達を義務付け
内閣府 CIO補佐官 平林元明氏が6月29日、情報処理推進機構のイベント「IPAX 2007」で解説した。平林氏によると、指針の目的は「政府調達を中小企業に開放し、ベンダ間の競争を促進すること」。設計・開発が5億円以上のシステムについては、一括調達ではなく、個別システムに分割して調達することを指針は定めている(指針の対象は調達予定価格が1億3000万円以上のシステム)。従来はハードウェア、ソフトウェア、運用・保守などをベンダが一括して調達してきた。そのため、体力がある大手ベンダしか入札に参加できないという問題があった。調達を分割することで中小企業が参加しやすくなることを狙う。
また、指針は契約を明確にすることも求める。政府機関側は入札開始前に、調達スケジュールやシステム方式を記載した調達計画書を作成、公開することが義務付けられる。政府機関とベンダ側の“馴れ合い”を排し、システム開発のプロセスを可視化することが目的だ。システムのブラックボックス化を防ぎ、将来、システムを修正する場合も柔軟に対応できるようにする。
ベンダロックインからの脱却
「オープンな標準に基づく要求要件」を求めるのは調達仕様書。調達仕様書は政府機関側からベンダ側に対して、システム提案に必要な情報を具体的、網羅的に記載する文書。一般にも公表される。要求要件を厳密にすることで、政府機関の業務を熟知した既存ベンダと、新規参入のベンダが同じ条件でシステム提案できるようにする。特定の製品名ではなく、オープンな標準に基ずく要求要件を求めるのも、“ベンダロックイン”ともいわれる特定ベンダ依存からの脱却が狙いだ。
指針は「オープンな標準に基づく要求要件」について、「特定の具体的な商標名等を用いた要求要件を定めないこととする。具体的には、原則として、独自の機能、独自のデータフォーマット及び独自の方式を使用せず、国際規格・日本工業規格等のオープンな標準に基づく要求要件の記載を優先する」と明記している。平林氏は「いままでは仕様書に製品名を記載してきたが、そうではなく技術標準で表現する」と話した。
仕様書に「OASIS公開文書形式標準」
新しい指針を受けてOSSの採用が始まっている。平林氏によると「国の最適化計画の半数近くがOSSを導入、または採用検討」しているという。ベンダにロックインされないことや初期導入コストが安いことが検討理由。内閣府の経済社会研究所は「OSSを想定したシステム構成を事前に検討し、商用製品と組み合わせた適材適所による要件を作成」(同氏)。
さらに内閣府LANの調達では、機能要件や性能要件を中心にし、製品を特定する記載を最小限にした調達仕様書が作成された。ベンダからの提案書のフォーマットについても、従来はWord形式などを指定することが多かったが、内閣府は「OASIS公開文書形式標準」と記載した。つまりOpenOffice.orgなどが採用する「OpenDocument Format」(ODF)を現時点で指定した格好だ。
平林氏は指針について「必ずしも政府がOSSを決め打ちで導入する方向ではない。(OSSと商用ソフトウェアは)適材適所だ。OSSと商用ソフトウェアを公平に扱うのが政府の方針」と語った。
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