NECエレの上場廃止基準該当については「特にすることはない」

昨年は不本意な1年だった。今年は目標必達〜NEC矢野社長

2007/07/10

 NECは7月10日、経営方針説明会を実施し、同社社長の矢野薫氏が就任後1年間を振り返ったほか、2007年度の経営目標を売上高4兆7000億円、営業利益1300億円、経常利益800億円、当期純利益300億円と発表した。

矢野社長写真 自らが愛用するN904iを取り出しモバイル事業の好調さをアピールする矢野薫社長

 矢野社長は冒頭、「昨年は本当に不本意な1年だった。携帯電話事業は回復したものの、エレクトロンデバイスの赤字回復ができなかった。今年度は昨年の轍を踏まないで、エレクトロンデバイス事業の黒字化を必ず達成したい」と就任後の1年間を振り返った。

 NECグループの目指す方向については、「グローバルなイノベーションカンパニー」を今年も推進するとし、ITやモバイルなどの「企業・個人向け事業」とエレクトロンデバイスを中心とした「電子デバイス事業」、キャリア向けネットワークなどの「社会基盤事業」の3つの事業基盤をさらに強化するとした。一方で500億円規模の開発投資を継続し、「イノベーションは事業の境界からこそ出てくるもの。その境界に組織を作ってしまったら意味がない。今後もこの組織を継続し、組織間に存在する境界から新しいイノベーションを開拓していきたい」とコメントした。

 経営基本方針については、「ステークホルダーを満足させるために、しつこく利益を追求する」としたうえで、「昨年社長に就任して以来、とにかく“コンプライアンスを第一に”と訴えてきた。すべての面でお天道さまにきちんと顔向けできる、恥ずかしくない会社にしたい」と説明した。また、モバイルやエレクトロンデバイスをきちんと回復させるほか、NGNを中心とした成長戦略をきちんと始動させていくとした。

 また、2006年の営業利益を振り返り、期当初予想の約1100億円のうち、IT/ネットワークソリューション分野で売上計上のズレや瑕疵補修引当200億円などを計上したことで260億円減少したほか、エレクトロンデバイス分野で310億円の減少があったため、モバイル・パーソナル事業の65億円増など計165億円増加したにもかかわらず、結果的に700億円増に留まったと説明した。

 2007年度の運営方針では、売上高を2006年度の4兆6526億円から1%増の4兆7000億円と予想。営業損益を同700億円から600億円増の1300億円と予想した。営業損益の内訳では、IT/ネットワークソリューション事業で前年比200億増、モバイル・パーソナル事業が395億円増、エレクトロンデバイス事業が260億円増とし、戦略投入費用200億円など計254億円を引いた600億円の増加と予測した。

 事業別に見ると、まず問題のエレクトロンデバイス事業では、2006年度の売上高8610億円に対して1%増の8700億円と予測。前年比で200億円の固定費削減などを実施し、セグメント損益を2006年度の230億円の赤字から、30億円の黒字に転換すると説明した。矢野社長は「NECトーキンの電池事業が問題だったが、事業基盤を強化するほか、タンタルキャパシタといったヒット商品も出ている。プロードライザも順調に立ち上がっており改善する」と説明し、電池事業の改善もエレクトロンデバイス事業の黒字化に貢献するとした。

 また、「なぜ、NECが半導体をやるのか?」という問いに対し、矢野氏は「当社はIT・ネットワークにおける強みがある。これに加え半導体を加えた総合力が、中期的には新市場獲得の要因となるからだ。例えば、自動車向けビジネスを考えた場合、半導体部品から車載機、その後の車外ネットワークサービスに至るまで、デバイス・ソフト・ハードを融合して提供できる強みがある」と語り、NECエレクトロニクスの必要性を強調した。

 続いてモバイル事業では、欧州の個人向けPCブランドを売却したことにより、売上高が2006年の9650億円から8900億円に減少するものの、セグメント利益は同335億円の損失から60億円の黒字に転換すると予測。「私は『NECのケータイのデザインがダサくなってきている』と感じていたので、まずデザインを何とかしろと命令した。さらに、大きさと使い勝手も向上させた。その結果、N904iやN703iμなどのヒット作が生み出せた。つまり、たった半年程度で結果が出た。当社のモバイル事業が復活する種が蒔かれつつある」と評価した。PCを中心としたパーソナルソリューション事業では、PC事業の利益体質を強化して黒字化定着を図るほか、NGN時代に向けてホームサーバを中心とした新しいパーソナルソリューション製品など“新しいコンセプトの製品”を開発していくとした。

 IT/ネットワークソリューション事業は、2006年度の売上高2兆7588億円から4%増の2兆8700億円と予想。セグメント損益は同1541億円から、2007年度では1740億円と予想した。この事業では、「数量ベースでは好調なものの、単価の下落が大きいため、大幅な売り上げや利益の向上は難しい」とコメント。一方で、NGNへの期待は大きく高まっているという。

 NGNについては、NGN関連書籍が増加している点や、BIGLOBEにおけるNGNの検索回数が2006年4月と比較して2007年4月では3倍に増えていることなどから、矢野社長は「この1年でNGNの風を起こすことができた」と評価。NGN関連事業として、2006年度の売上高約900億円に対し、2007年には倍増となる2000億円を目指すとした。具体的には、認証や課金、セキュリティなどの「サービスプラットフォーム」を拡大させるほか、NGNを先取りする企業向けのソリューションとしてシンクライアントソリューションの展開を本格化させる。

 これらのまとめとして、2007年度の経営目標を、売上高が前年度比1%増の4兆7000億円、営業利益が同600億円増の1300億円、経常利益が同637億円増の800億円、当期純利益が同209億円増の300億円とした。矢野社長は、中でも強化したい指標として「ROE(株主資本利益率)」を挙げた。同氏は、「日本でも最も影響力のある投資家である企業年金連合会が『ROE8%以下』の企業に対して意見を言ったことに配慮し、まずこの8%をクリアして2桁に乗せたい。欧米では『ROE15%がグローバルに通用する企業』と言われており、当社も15%を目指すが日本ではなかなか難しい事実もある。まずはすぐに2桁を達成させる」とコメントした。

 また、NECエレクトロニクスが東証の定める上場廃止基準に該当し、猶予期間に入ったと公表した件については、「この秋に適用される予定の新基準では、当社の株式は猶予期間入り銘柄指定から解除されると見通している。従って、いまNECとして特に何かすることはないと考えている」とコメントした。

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(@IT 大津心)

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