インタビュー:Flash担当プロダクトマネージャ

「AIRで開発者とデザイナの間を埋める」、アドビ

2007/07/13

 先月、開発コードネームの「Apollo」の名前で呼ばれていたアドビの次期RIAプラットフォーム、「Adobe Integrated Runtime」(AIR)が正式に発表された。それに合わせてAdobe Dreamweaver CS3でAIRアプリケーションを開発するための拡張機能「Adobe AIR Extension for Dreamweaver Beta 1」が公開されたほか、まもなくAdobe Flash CS3向けのエクステンションのベータ版も公開予定だ。徐々にベールを脱ぐアドビのAIRを中心とした次期アプリケーションプラットフォームのビジョンについて、Flash担当のプロダクトマネージャ2人に話を聞いた。

air01.jpg Adobe Flash ビジネス担当グループプロダクトマネージャーのジェニファー・テイラー氏(Jennifer Taylor)と、Adobe Flash 担当テクニカルプロダクトマネージャーのリチャード・ガルバン氏(Richard Galvan)。

――マイクロソフトのSilverlight、グーグルのGoogle Gearsなど、AIRのライバルとされる技術がいくつか登場しようとしています。改めて、3つの違い、あるいはAIRの強みを教えてください。

ガルバン氏 いちばんの違いは、AIRは非常に普及した技術を使っている点です。AIRのランタイムはPDFリーダーやFlashプレーヤーをブリッジする役割を担うもので、これらを置き換えるものではありません。つまり、既存の2つの優れた技術を統合するためのプラットフォームというわけです。

テイラー氏 PDFやFlashに加えて、Dreamweaverユーザーなど伝統的なWeb開発者はHTMLやJavaScriptを使います。これら3つの技術を扱うツールは互いに別々に稼働し、“サイロ化”していました。それらを統合するのがAIRで、名前に「Integrated」(統合)とあるのは、それを端的に表しています。

――AIRの開発環境を整理して教えてください。

ガルバン氏 AIRの開発環境としては現在ベータ版を提供しているAdobe AIR Extension for Dreamweaver、これからベータ版を提供予定のAdobe AIR Extension for Flashがあります。基本的な使い方は、今までに持っているコンテンツをAIR用と指定して保存するだけです。後は、それぞれのエクステンションがAIRアプリケーションに必要なアイコンやファイル、パッケージ化を自動的に行ってくれます。

 また、AIRの開発環境として、開発者向けのIDE環境のFlex BuilderやコマンドラインのSDKも提供されています。どれが何かに適している、というような区分けをわれわれはしていません。使う技術は違うかもしれませんが、正しく書かれたAIRアプリケーションであれば、どれを使っても同じものが作れます。ですので、すでに持っているスキルや、お気に入りのツールを使って開発していただければと思います。Extensionをリリースしたことでクリエーターの方たちが開発の世界に踏み込むお手伝いをしたということです。また、われわれはAIRによって、これまでWebの世界だったものをデスクトップの世界にまで広げていく手だてを提供しているのです。

テイラー氏 RIA(リッチ・インターネット・アプリケーション)という用語を初めて使ったのは、われわれなのですが、今後、Webを介してアプリケーションを提供していく機会はますます増えてくると思います。そうなると、Webとデスクトップの境界線が曖昧になっていくでしょうね。

 昔の“Wild Wild Web”、みんながWWWに狂乱した頃を思い出します。そういうイノベーションの時代に、自分たちのプラットフォームを拡大できるのはとてもエキサイティングなことだと思っています。

 5年前に「PC上のFlashプレーヤーでテレビ番組を見るようになる」と友人に言ったら、きっと私は笑われたでしょう。でも、今やそれがデファクトです。ユーザーは「こんなことをしたい」というような、クレイジーなアイデアをたくさん持っています。われわれは技術的制約がどこにあるかということよりも、そういうアイデアを実現できる環境を提供する、ということに関心があります。

――先ほどサイロという表現がありましたが、Webの世界では開発者とデザイナのワークフローについても空白領域があり、サイロ状態です。その間を埋めるものは?

テイラー氏 開発者がデザイナーと密接に仕事をすることは重要だと認識しています。われわれは反復性のある形で仕事ができること、つまり各ツールを使うユーザーが境界線なくコンテンツをやり取りできること、そういう統合を目指しています。どんなアプリケーションでもUIが必要ですが、これはPhotoshopやIllustratorを使うデザイナーに任せたほうがいい。こうしたクリエイター向け製品と、開発者向け製品の統合は継続的に続けていく方針です。

――PDFのようにAIRをオープンな標準規格として、サードパーティからも開発環境が登場するという世界も想定されていますか?

ガルバン氏 そうしない理由はないと思います。

テイラー氏 スタンドアローンのAIRコンパイラを、さまざまなツールと統合させていくことに興味を持っています。サードパーティのツールであっても、どんどんAIRアプリケーションを作ってほしいと思っています。

 われわれはすでにFlex SDKやFlash VMをオープンソース化しました。これは、オープンにコミュニティと密接に関わっていこうという、われわれの意志の表れです。

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(@IT 西村賢)

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