アプリケーションロード時のメモリ使用量を削減

新機能の省メモリ機構でマスにも焦点、シンビアン

2007/07/17

symbian01.jpg シンビアン日本法人代表取締役社長の久晴彦氏。「フルキーボードといえばWindows Mobileというイメージもあるかもしれませんが、Symbian OSでもノキアなどからフルキーボード端末が出ています」と語る

 今年3月末、Symbian OS搭載スマートフォンの日本での累計出荷台数が2000万台を突破した。2003年に日本発のSymbian OS搭載端末が出荷されてから1000万台を突破するのに3年かかっているが、その次の1000万台を突破するのに要した時間は約1年と、スマートフォン市場自体の拡大を背景に出荷数の伸びは加速している。7月17日、同社はNTTドコモから発売された「FOMA SO704i」にSymbian OSが搭載されていることを発表。国内での出荷実績は、ちょうど60機種目となったという。

 現在同社は全世界のスマートフォン市場で72%の高いシェアを維持しているという。対抗馬となるのは、Windows Mobileを持つマイクロソフト、松下電器やNECなどが利用する組み込み向けLinux、北米ではBlackBerryなどがあるが、「市場が断片化していて、特にどれが将来競合となるかということは予測が難しい」(英シンビアンCEO ナイジェル・クリフォード氏)という。代わりに同社が挙げる大きな「競合」は、日本でいえばマイクロITRONのような、組み込み向けの独自OSだ。高機能な端末は汎用OSを搭載したものが多いが、安価な端末では、独自OS利用の端末がまだまだ多い。

symbian03.jpg 英シンビアンCEO ナイジェル・クリフォード氏

 同社ではバージョン9からボリュームライセンスを用意することで、大口顧客には1台当たりのライセンス料を引き下げる施策を取っている。2006年第4四半期と2007年第1四半期で比較すると、Symbian OS搭載端末の出荷台数自体は1460万台から1590万台へと増えているが、逆に1台当たりのライセンス料は5.1ドルから4.5ドルへと下がり、その結果として総収入も4490万ポンドから4130万ポンドへ下がっている。「これは出荷を増やすためのボリュームライセンスによる効果で、収益減も健全な範囲」(シンビアン日本法人代表取締役社長の久晴彦氏)。

 3月に発表したバージョン9.5では省電力機能の強化やパフォーマンスの向上など70以上の機能強化を行った。なかでも「デマンドページング」と呼ばれる機能は、アプリーションのメモリ使用量を減らせる技術として注目される。

 デマンドページングは、これまで関連ファイルをすべてロードすることで起動していたOSやアプリケーションで、必要なコード部分だけをRAMに読み込むことで、アプリケーションの起動時間を最大75%程度短縮する技術だ。会見の席上で披露したサンプル実装のデモ機では、1分弱かかるデバイスの起動で15秒の差があり、Webブラウザの起動でも、明らかに目で見て分かる違いがあった。最低でも30%はメモリ使用量を削減できるといい、コストの問題からメモリ搭載量を増やせない150ドル以下のミドルレンジの端末に対してもSymbian OSが現実的な選択肢となり、「シンビアンが対応可能なマーケットは4分の3以上になる」(クリフォード氏)という。

symbian02.jpg クリフォード氏が示した資料。現在主に200ドル以上の端末で使われているSymbian OSは、ミッドレンジやローエンドに対しても対応可能になるという

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(@IT 西村賢)

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