開発言語「Apex Code」を正式サポート

SaaSから進化し“PaaS”へ〜セールスフォース新バージョン

2007/07/18

 米セールスフォース・ドットコムは7月18日、23世代目となる新バージョン「Salesforce Summer'07」(以下、Summer'07)をリリースした。Summer'07では、開発プログラムである「Apex Code」を正式サポート。セールスフォース・ドットコム 代表取締役社長 宇陀栄次氏は、「従来の『SaaS(Software as a Service)』から『PaaS(Platform as a Service)』に進化したバージョンだといえる」と語り、今後プラットフォームとしての利用を拡大していくことに意欲を見せた。

宇陀氏写真 セールスフォース・ドットコム 代表取締役社長 宇陀栄次氏

 ワールドワイドにおけるSalesforce.comの利用は順調に増加しており、導入企業数は2007年4月30日時点で3万2300社を超え、2008年度の収益見込みは6億ドル、年率成長率は55%に達する。また、日本におけるビジネスも順調だとし、宇陀氏は「私が入社した3年前には、1企業につき10本ずつといった単位だったが、それが1企業当たり100本単位となり、いまでは1000本単位といった具合に1社当たりの導入ユーザー数も増えてきている。日本だけのユーザー数は公表できないが、アジアパシフィック地域では2006年末で6万ユーザー程度。中でも日本は急速にユーザーが増えている地域だ」とコメントした。

 また、宇陀氏は総務省や経済産業省の取り組みもアピール。総務省は2007年4月にASPやSaaSの普及促進を目指す「ASP・SaaS普及促進協議会」を設立。中小企業におけるIT化にASPやSaaSが有効であることから、これらの普及に向けた取り組みを始めたという。また、経産省も中小企業のIT化基盤整備を目的とした「IT化による生産性向上の加速化に向けて」と題した報告書を発表している。これらの点について同氏は、「総務省や経産省が、中小企業のIT化をサポートするものとしてSaaSに注目し、サポートし始めている。私も両省の課長級と意見交換を行い、この取り組みを積極的にサポートしていく」と語った。

 Salesforce.comの23世代目の新バージョンとなるSummer'07の最大の特徴は、Salesforce.com向けの開発プログラミング言語である「Apex Code」をサポートした点だ。Apex Codeは2006年10月に発表され、一部のユーザーに先行公開されていたが、今回すべてのユーザーが利用できるようになった。Apex Codeを利用することによって、ユーザーはSalesforce.comのプラットフォーム上でさまざまな独自アプリケーションを開発し、動かすことができるようになる。プログラムやデータはセールスフォースのサーバ上に、完全に他社から隔離された状態で動作可能だ。

画面イメージ写真 Summer'07の新機能である「Apex Code」を使った例。映画館の予約プログラムをApex Codeで作成したケースで、入力されたデータはSalesforce.com上に保存される

 Apex Codeを使えば、バッチプログラムを作成してデータ整理を行ったり、外部のアプリケーションを操作したりもできる。例えば、プレスリリースを掲載するときに特定のブログに自動的に書き込むApex Codeを作成すれば、そのコードを実行するだけで外部ブログへプレスリリースを掲載することができるようになる。

 また、ユーザーからの要望が強かったテスト環境である「Sandbox環境」の複数個利用を実現。これにより、作成したApex Codeを実験環境で確認しつつ、QA用やトレーニング用のSandbox環境を同時に作成することも可能となった。また、ワークフローのトリガー条件を数式による複雑なトリガー条件に対応した。

 そのほかの機能追加では、カスタムレポートを簡単に作成できる「カスタムレポート作成ウィザード」や、ユーザーインターフェイスの機能強化、Lotus Notesとメールの同期などが行える「Salesforce Connect for Lotus Notes」をリリースした。

 宇陀氏は「いままでは、当社の強みであるCRMの機能をとことん深めていくことに注力してきた。しかし、Apex Codeをリリースした今後は、CRMだけでなくプラットフォームとして横にどんどん広がって利用していってもらいたいと考えている。例えば、社員4000人の会社がいままでCRM機能だけを400人が利用していたとすると、今後はプラットフォームとして4000人全員が使える機能をApex Codeで開発して使ってほしい。そのような使い方をすることで、日本版SOX法などのコンプライアンス対応にも利用できるはずだ。今後はさらにPaaSとしての機能強化を図っていく」とコメントした。

(@IT 大津心)

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