オートデスク担当者が講演
Google Earthが熱くしたGIS市場の最新
2007/08/06
オートデスクが8月3日に開催した「次世代空間情報カンファレンス」で、米オートデスクのGeoSpatial 技術統括 ディレクタのジェフ・ザイス(Geoff Zeiss)氏がGIS(地理情報システム)を利用した施設管理に関する基調講演を行い、「Google Earthの登場で空間地理情報の市場は、いま一番エキサイティングだ」と語った。
オートデスクは、GISデータのオープンソース化への取り組み強化を行っている。空間地理の処理は、CADを使って図面は書かれるものの、他部門や役所へ図面が渡る際には紙データであることが多い。例えば、現場の事情により設計変更をする際にも、現場に渡った紙図面に朱を入れ、それを見てCADで清書するような作業が生じている。また、地図と現場情報の不一致を報告し忘れる可能性もある。同社では、このような非効率的な状況を改善するため、Webを通じて誰でもアクセスできるデータベースを作り、プロジェクトにかかわるすべての人たちが参加することでリアルタイムに情報更新していくシステムの提案を行っている。
GISをオープン化するBIM
さらに、オープンソースのGISデータをより効率的に扱うために、同社はBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング) の開発にも取り組んでいる。
BIMで構築した3次元シミュレーションデータにはCADやCGソフトのようにレイヤが存在し、「家具だけを消す」「鉄鋼だけにする」などの選択が可能。寸法や画像の情報しか持たないCADの3次元モデルでは作れず、GISの情報を持ったBIMの3次元モデルであるからこそ実現したという。同じ3次元モデルの仲間同士であるBIMモデルとCADモデルのデータの違いは、「プロパティを持っているか」、「相互関係を持っているか」だ。
例えば、CADの線分データには、色や長さの情報などしかないが、BIMの線分データには、建築設備に関係した配管関連のデータや電気配線のデータがプロパティとして含まれる。また、CADの目的は工学的な設計や製図であり、BIMの目的は、「設計物がどんなものになるか」が「経験できる」シミュレーションである。
講演の中でザイス氏は、GISを利用して作ったBIMによる3次元CGシミュレーションのデモンストレーションを行った。3次元CGの世界の中で、空からビルを見下ろし、だんだん近づき、さらにビルの中を歩き回る様子を映し出した。
「このような3次元のバーチャルモデルのシミュレーションは、ゲーム世代の若者にとって、なじみ深い世界。だから未来の技術者たちがとっつきやすいと思う」(ザイス氏)
セカンドライフ感覚
同じシミュレーションであるCAEなどの構造解析の3次元モデルとは、扱うプロパティや用途が異なる。「構造解析は、材料物性や力量などフィジカルなデータがプロパティだが、BIMは電気や配管の情報などフィジカルでないデータがプロパティだ。BIMのシミュレーションを作るには、工学的な知識はあまり必要なく、電気や配管の知識が必要になる。ただ、シミュレーションの操作自体は専門知識が必要なく、『シム・シティ』や『セカンドライフ』のような感覚で操作ができる」とザイス氏は説明した。
オートデスクは、機械・建築設計に使用するCADの販売や開発を行う事業部のほかに、CGの技術を利用し、映画の特殊効果やゲームなどのエンタテイメント系を専門に扱う事業部を持っている。「オートデスクは、『Convergence Company』だ。他社ベンダでも多角面な事業展開を行っているようだが、当社ほど広くないだろう」(ザイス氏)。
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