IPAが作成者に働きかけ

日本の家電メーカーはGPL v3を受け入れられるのか

2007/08/27

 Free Software Foundation(FSF)は6月末、GPL(GNU General Public License)のバージョン3を正式決定した。GPLはLinuxが採用するライセンス形態で、LinuxがGPL v3に移行した場合、Linuxをデジタル家電などに使うことが多い日本の家電メーカーには影響が大きい。家電メーカーはGPL v3にどう向き合うべきなのだろうか。

gpl01.jpg IPAのオープンソースソフトウェア・センター長の田代秀一氏

 2006年1月に公開されたv3のドラフト1版は、著作権保護(DRM)対抗条項や、ソフトウェア特許への対抗条項があり、「非常に過激だった」と、情報処理推進機構(IPA)のオープンソースソフトウェア・センター長の田代秀一氏は振り返る。DRM機能を備える機器でのソフトウェアの使用を制限するなど、特に組み込み機器への影響は「非常に深刻で、危険な部分が多かった」という。

 GPL v3のドラフト1版については家電メーカーからだけでなく、さまざまな関係者から批判があり、FSFは軌道を修正。6月末に公開された最終版では、DRM対抗条項やパテント対抗条項などは削除され、ソフトウェア改変防止策禁止条項は緩和された。IPAは、コロンビア大学ロースクール教授で、FSFの法律顧問を2007年4月まで務めてGPL v3の作成にかかわったエベン・モグレン(Eben Moglen)氏を2度にわたって訪問し、協議した。

もろ手を挙げて賛成ではない

 IPAの働きかけもあり、GPL v3は日本の家電メーカーが何とか受け入れ可能な内容になったようだ。田代氏は「v3はどうにもならない部分は除外されている。もちろん、もろ手を挙げて賛成ではないが」と語り、「家電メーカーは今後v3への対応をいろいろ検討していくことになるだろう」と話した。

 日本の家電メーカーがもろ手を挙げて賛成できないのは、v3にいくつかの問題があると考えているからだ。1つは「Installation Informationの開示義務」。「Installation Information」とは改変されたソフトウェアを機器にインストールするための情報。GPL v3では「any methods, procedures, authorization keys, or other information required to install and execute modified versions of a covered work in that User Product from a modified version of its Corresponding Source」と定義している。田代氏は「どういう情報をどう開示するのか不明」として、Installation Informationの開示義務は「利用者からの無限要求を生むのではないか」と懸念する。

解釈を固める

 IPAはこのような懸念をモグレン教授にぶつけて解釈を聞き出している。田代氏によると、モグレン教授はInstallation Informationを、「インストールに必要なキーなどの必要最小限の情報に限定。チュートリアル情報の提供、特殊工具などの提供義務はない」と説明した。Installation Informationの配布についても、「公開は必要なく、ユーザーの求めに応じて開示されればよい。インストールキーは機器ごとに固有にしてもよい。ソフトウェアがROMにインストールされていれば、Installation Informationの開示義務はなくなる」などの解釈を示したという。

 IPAはモグレン教授と連絡を取りつつ、このような解釈をコメンタリーとして明文化する計画だ。ほかにもクロスライセンスの実施が実質的に不可能になるような条項があり、IPAはモグレン教授との間で、問題とならないよう解釈を確認している。

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(@IT 垣内郁栄)

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