ORACLE MASTERをリクルート

DB戦争:マイクロソフトがオラクルに仕掛ける4つのトゲ

2007/09/04

 データベースをめぐるマイクロソフトと日本オラクルの競争が激化してきた。両社とも競合を強く意識したキャンペーンや施策を展開し、ユーザーやパートナー、技術者の獲得に躍起になっている。Oracle Database 11g、SQL Server 2008と両社とも新製品の出荷を控えるだけに、担当者の舌戦にも力が入っている。

sql01.jpg マイクロソフトのサーバープラットフォームビジネス本部 業務執行役員 本部長の五十嵐光喜氏

 マイクロソフトは9月4日、対オラクルの4つの戦略を発表した。同社のサーバープラットフォームビジネス本部 業務執行役員 本部長の五十嵐光喜氏が「エキサイティングな内容だ」と語る、オラクルへの“4つのトゲ”だ。

 Oracle技術者の間で話題になりそうなのが「ORACLE MASTER リクルート・キャンペーン」。Oracle製品の認定資格であるORACLE MASTERの取得者に対して、SQL Serverの技術セミナーを無償で提供し、マイクロソフトの認定資格の取得を呼びかける内容だ。ORACLE MASTERのSilverとBronze取得者に対しては、1日間の「SQL Server 2005 早わかりセミナー」を無償で提供。認定資格の「マイクロソフト認定テクノロジー スペシャリスト SQL Server 2005」(MCTS)の取得を働きかける。

 また、ORACLE MASTERのPlatinumとGold取得者に対しては、3日間の「SQL Server 2005 ブートキャンプ」に無料で招待。「マイクロソフト認定 ITプロフェッショナル データベース アドミニストレータ」(MCITP)の認定資格を受験できるバウチャーチケットを提供する。マイクロソフトはこのリクルート・キャンペーンで、2008年6月末までにMCTSで800人、MCITPで300人の資格取得者を見込んでいる。2つのセミナーはそれぞれ「Oracle University」の講師と共同開発。利用するテキストは、左ページにOracle用語、右ページに対応するSQL Server用語を記載し、Oracle技術者が容易に理解できるようにする。

 五十嵐氏はリクルート・キャンペーンについて「よりクオリティの高いエンジニアを育成する。ORACLE MASTER取得者も単一のデータベースだけでなく、複数のデータベースを知っているほうがエンドカスタマーの利益になる」と話した。

SQL Serverを50%引きで提供

 技術者だけでなく、エンドユーザーに対しても製品の移行を働きかける。OracleやIBM DB2、Sybaseなどの他社データベースや他社ビジネスインテリジェンス(BI)からSQL Server 2005に移行するエンドユーザーに対して、Enterprise Editionの場合でライセンス価格を50%引きにする。Standard Editionは25%引き、CALは50%引きする。それぞれソフトウェア アシュアランスとの同時購入が条件。2008年6月末までの期間限定だ。ソフトウェア アシュアランスのため、SQL Server 2008へのアップグレード権利も付く。

 さらに、Oracle DatabaseからSQL Server 2005への移行を自動化するツール「SSMA(SQL Server Migration Assistant)for Oracle」を本日から無償提供する。Oracle 7.3以降を対象(Oracle Database 11g除く)に、データベースのアセスメントやスキーマ移行、ビジネスロジックの変換、データの移行などを自動化。Oracle DatabaseからSQL Server 2005に手動で移行する場合と比べて、作業量を最大80%削減するという。

 マイクロソフトはSQL Server 2005を担当するApplication Platform製品関連のコンサルタントを2008年6月末までに60人から120人に倍増する計画や、SQL Server 2005を利用したシステム設計ノウハウをガイド化し、パートナー企業に提供する計画もある。

 マイクロソフトはこれら4つの施策によってSQL Serverの売り上げを今後3年間で2倍にすることを目指す。SQL Serverの市場シェアも現在の1.5倍の値に押し上げるという。

業務アプリ、OSでもライバルに

 マイクロソフトはデータベースのエンタープライズ市場への進出を狙っている。対して、オラクルは中小システム市場への製品浸透が課題。エンタープライズ市場ではOracle、中小システムはSQL Serverが強みを持っていて、両社の激突は必然だ。データベース以外でも業務アプリケーションなどで両社は競合関係にある。OSでも「Red Hat Enterprise Linux」をオラクルがサポートする「Oracle Unbreakable Linux」を発表。マイクロソフトと同様にOSからデータベース、アプリケーションまでを統合的にサポートできる体制を整えた。

 日本オラクルの常務執行役員 システム製品統括本部長 三澤智光氏は8月6日の中小システム向け戦略発表会見で、「ライバルはマイクロソフト。きちんとけんかしていく」とたんかを切った。マイクロソフトの五十嵐氏は9月4日の会見で「世の中をSQL Server一色にしたい」とぶち上げた。

(@IT 垣内郁栄)

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