複数のOSやWeb向けに同一環境で開発

コードギア、Win32と.NET双方に対応した開発ツールを発表

2007/09/06

 ボーランドの開発ツール部門であるコードギアは9月6日、RADツールの最新版「CodeGear RAD Studio 2007」を発売した。9月中に出荷を予定している。既存データベース製品との連携や独自データベースエンジンの組み込みが容易で、Windowsネイティブのアプリケーションと.NETアプリケーションの両方の開発が行える。単一の開発環境で複数言語に対応し、Delphi for Win32、C++Builderに加え、新たにDelphi for .NETが追加され、.NET 2.0の開発が可能になった。

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 個人開発者向けの「CodeGear RAD Studio 2007 Professional」が12万6000円(税込み)、主要な商用データベース製品をサポートする企業向けの「同Enterprise」が33万6000円(同)、Enterprise版にモデルドリブン開発の支援ツールを加えた「同Architect」が39万9000円(同)の3つのバージョンを全国の量販店や流通代理店、オンラインショップで販売していく。バージョンアップ版は、それぞれ6万7200円(同)、21万円(同)、31万5000円(同)。日本語版のほか、英語版、ドイツ語版、フランス語版も同時にリリースする。

既存の開発資産や開発スキルを活用

codegear02.jpg CodeGearマーケティングディレクター 藤井等氏

 CodeGear RAD Studioが主なターゲットとするのは、ISVやSIer、企業ユーザーなどの開発者。エンタープライズ向けアプリケーション開発の現場では「Javaや.NETのようなマネージドコードが主流になるといわれながらも、リプレースプロジェクトの増加などでネイティブアプリケーションの需要は相変わらず高い」。開発現場の“裏トレンド”について、そう話すのはCode Gearマーケティングディレクターの藤井等氏だ。OSのサポート切れや、データベースの置き換え、Windows VistaやWebアプリケーションへの移行などにより発生するリプレースプロジェクトでは、過去の開発資産を最小限の労力で移行したいというニーズが強いという。予算や人員が限られているばかりでなく、開発者のスキル面でも限度がある。変化する環境に対応することが求められる一方、RubyやPHPといった最先端のツールを使いこなすスキルの蓄積がないことも、企業が直面する課題だという。

 こうした状況に対して、Code Gear RAD Studioでは、これまでボーランドブランドの下に10年以上にわたって培ってきたGUIコンポーネントの「VLC」(Visual Component Library)やデータベース接続のための抽象化されたコンポーネント群を使ったビジュアルアル開発環境に対して、Delphi .NETを加えることで、Ajax対応のASP.NET 2.0開発までを可能にした。また、データベースアーキテクチャ「DBX4」は、新たにADO.NET 2.0に対応した。

 OSやデータベースの差異はコンポーネントが吸収するため、Vista対応のために時間を取られることなく本来の開発業務に集中できるという。新バージョンのVCLやVCL.NETでは、Windows Vistaで搭載されたAeroをサポートする。

codegear03.jpg GUIコンポーネント同様に、ウィンドウに対してデータベース接続のコンポーネントをドラッグ&ドロップで貼り付けていくことで、データベースアプリケーションが開発できる

 VCLを使った開発モデルについて藤井氏は、「VCLこそCodeGearの強みで差別化要因と再認識した」とし、今後もVCL強化に力を入れていくという。4月には、同社が提供する「Delphi for PHP」に組み込むことでビジュアル開発が可能になるオープンソースソフトウェアの「VCL for PHP」が登場するなど利用が広がっている。ただし、C#開発についてはコンパイルのみが可能でビジュアル開発やモデリングなど旧バージョンで提供されていた機能が省略されている。これはコードギアの開発リソースの集中による結果だという。

新たなデータベースエンジンも搭載

 新たに、アプリケーションに組み込み可能で可搬性の高いデータベースとして「BlackfishSQL」が搭載された。.NET言語またはJavaで利用できる軽量なデータベースエンジンで、組み込み配布用のライセンスもCodeGear RAD Studioに同梱される(ライセンス形態はエディションによって異なる)。

 最上位版のCodeGear RAD Studio 2007 Architectには、.NET 2.0向けのモデルドリブン開発フレームワーク「ECO IV」(Enterprise Core Objects)が搭載される。ECOを使うと、ビジュアルにモデルを定義してアプリケーションの開発が行える。定義したモデルから、データマッピングや永続化のインターフェイスを自動的に生成できる。開発後もモデルにたいして修正を加えることで、自動的に修正が反映され、メンテナンスも容易になるという。

(@IT 西村賢)

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