ハードウェアのコンポーネントとしてのハイパーバイザ
“サーバ仮想化時代は始まったばかり”、VMwareの今日と明日
2007/09/12
「それは来年のVMworldで出てくる機能だ」「ではVI4(VMware Infrastructure 4)の一部になるということ?」「そういうことだ」。9月11日に開幕した米ヴイエムウェアのイベント「VMworld」で、同社 製品開発担当バイスプレジデントのポール・チャン(Paul Chan)氏は@ITの質問にこう答えた。
チャン氏が来年のVMworldで発表されるような機能だと話したのはポリシーに基づく高度な仮想サーバのプロビジョニング(導入設定)機能。つまり「メモリは○○、CPUは○○のリソースを要求するアプリケーションを仮想サーバとして動かしたい」といった要件に基づいて、現在の仮想サーバ環境から適切な物理サーバを自動的に探し出し、動作させることができるというもの。数カ月前に同氏は@ITのインタビューで、ヴイエムウェアはこれを目指していると話していた。
ヴイエムウェアのフラッグシップ製品スイートであるVMware Infrastructureのメジャー・バージョンアップは来年になるとしても、同社は今年のVMworldで、今後のサーバ仮想化技術展開の方向性にもかかわる発表を行った(リンク)。
9月11日に実施のVMworld基調講演で、米ヴイエムウェア社長兼CEOのダイアン・グリーン(Diane Greene)氏は「CPUやサーバの製品が仮想化に対応するようになった。OSも仮想化とのインターフェイスを持つようになり、システム管理でも仮想化への対応が進んでいる」と語った。サーバ仮想化、そしてVMwareを中心とする業界内のエコシステムが本格的に回り始めたというわけだ。サーバ仮想化技術を使ったソリューションを同社やパートナー企業が今後も投入していくことで、企業のIT利用におけるますます多くの課題を解決する、という。
しかし、シトリックス・システムズに買収されたXenSource、そしておそらく2008年に仮想化技術(コード名「Viridian」)をサーバOSの機能の1つとして組み込もうとするマイクロソフトなどとの関係はどうなっていくのか。現在は事実上独占的な地位を確保しているが、今後XenやViridianの展開が進むと、VMwareのハイパーバイザである「VMware ESX Server」はサーバ仮想化ソフト市場において“ワン・オブ・ゼム”になってしまうのか。
ヴイエムウェアは自社のサーバ仮想化技術のViridianやXenとの最大の違いとして、OS指向ではなく、ハードウェア指向であることを挙げている。マイクロソフトのハイパーバイザはOSと完全に分離されたものではなく、XenもLinuxを制御用に必要とする(いわゆる「ドメイン0」)。これに対し、VMwareは汎用OSを必要としない。このことを明確に表現したのが、9月10日に同社が発表した「VMware ESX Server 3i」だ。
現行のVMware ESX Serverは管理コンソール用にRed Hat Linuxを利用しており、これを仮想化対象の物理サーバで稼働する。しかし管理以外の仕事はしていない。ESX 3iではこの部分を削除して遠隔管理に置き換え、ハイパーバイザのみを動かすことで、サーバのメインメモリ消費とストレージ消費を抑える。数年後には、この形態のESX Serverが主流になっていく可能性があると、ヴイエムウェアの広報担当者は話した。
サーバベンダはESX 3iを自社のハードウェアに組み込んだ“仮想化対応サーバ”を販売する。ESX 3iはバンドルソフトウェアというよりもサーバのコンポーネントの1つになるわけで、ビジネス形態の面からもよりハードウェア指向を高めていることになる(ただしESX 3iのみの販売も予定されている)。
それほど遠くない将来に、OSを買うとハイパーバイザがついてくる時代がやってくる。そのときESX Serverはどうなるのか。チャン氏は「ハイパーバイザはいつか無料になるだろう」と語った。「そうなったときにもESX Serverをベースとした高度なソリューションをヴイエムウェアは提供していくし、標準化やオープンな環境作りに取り組むことで、パートナーもさまざまなソリューションを提供する。これがマイクロソフトに対する最大の防御になる」という。
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