垂直統合型ビジネスを強化

日経・朝日・読売が共同サイト、「ネット活用で新聞を断固維持」

2007/10/01

 日本経済新聞社、朝日新聞社、読売新聞グループ本社は10月1日、共同でネット事業を行うことや販売事業での協力を柱とする事業提携を結んだと発表した。朝日新聞社の代表取締役社長 秋山耿太郎氏は「ネットメディアにおける新聞社の影響力を高めたい」と提携理由を説明。現在のネットのニュースについても「その記事は新聞社の記者が取材、執筆したニュースが圧倒的」と指摘し、「メディアは多様化しているが、新聞こそが最も信頼性の高いメディア。新聞社の影響力を多くの人にもう一度、認識してもらうのが目的だ」と強調した。

 3社の共同ニュースサイトは2008年始めの開設予定。事業主体として民法上の組合を設立する。事業費は数億円規模。3年での黒字化を目指す。「3社の論評・記事を比べることが中心」(秋山氏)のサイトになる見込みで、「広告ビジネスにも期待している」(日本経済新聞社 代表取締役社長 杉田亮毅氏)という。3社が現在運営するニュースサイトは継続し、共同サイトから読者を誘導する。3社でスタートするが「趣旨に賛同する企業は排除しない」としている。

any01.jpg 提携を発表した朝日新聞社の代表取締役社長 秋山耿太郎氏(左)と日本経済新聞社 代表取締役社長 杉田亮毅氏(中)、読売新聞グループ本社の代表取締役社長 内山斉氏

 3社はそれぞれ大手ポータルサイトに記事を提供しているが、「縛りはかけない」(杉田氏)としていて、今後もそれぞれの考えで記事をポータルサイトに配信する。だが、共同サイトが閲覧数、収益を上げるため、大手ポータルに対抗した内容になるのは確実。杉田氏は3社の共同サイトにポータルサイト運営会社などを加えることは「いまのところはない」と話し、あくまでもコンテンツと配信を垂直統合的に行っていくことを説明した。そのうえで「(ポータルサイトなどに対して)別に敵対はしないが、まずは自分たちの力でどこまでいけるかを試したい」とした。

ネット活用で「新聞を断固維持」

 共同サイトは新聞の販売を伸ばすためのツールの役割もある。杉田氏は共同サイトを通じて「ネットにおける新聞社の役割が大きいということをあらためて知ってもらいたい。同時に大本の紙のニュースも見てもらうことを期待している」と話し、ネット上の記事をきっかけに紙の購読者数を伸ばせると説明した。読売新聞グループ本社の代表取締役社長 内山斉氏も「3社の提携はネットを活用して新聞を断固維持することに尽きる」と強調した。

 販売事業での提携は宅配制度という日本独自の新聞社のビジネスモデルを守ることが目的。朝日新聞社と読売新聞グループ本社はすでに北海道の一部で新聞販売店の相互乗り入れを行っているが、この相互乗り入れを大阪市や鹿児島県に拡大する。へき地や山間部、購読者数が不安定な一部都市部で宅配制度を維持することが主目的と3社は説明した。秋山氏は「3社はこれからも大いなるライバル。今回の提携は報道・言論の基盤を強化するための土台作り」と話した。

 3社はさらに災害発生時などの新聞発行の相互援助でも提携した。3社は現状、新聞発行システムについてそれぞれバックアップシステムを持つが、万一の場合に備えて、3社間で相互の援助体制を整える。2008年3月末までに正式協定を結ぶ。

(@IT 垣内郁栄)

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