金融端末や製造業のCADワークステーションを狙う

ワークステーションをサーバに集約で快適な環境を、日本IBM

2007/10/10

ibm01.jpg 日本IBM システム製品事業 ブランド・マーケティング&SMB担当ディレクター ジェイソン・ダイズ氏

 ターゲットはワークステーションのボリュームゾーン――。日本IBMは10月10日、ブレードサーバを使った新たなグラフィック・ワークステーション・ソリューションを発表した。金融トレーディング端末や製造業におけるCADワークステーションを対象とする。

 発表されたのはブレードサーバに挿すワークステーション・ブレード「BladeCenter HC10」と、デスクトップ側のシンクライアント端末「IBM CP20」で構成するソリューション。これまでユーザーのデスクトップに設置されていたWindowsワークステーションのOSやアプリケーションをHC10で稼働。デスクトップではディスプレイ、キーボード、マウスをCP20に接続、CP20がネットワーク経由でHC10と通信し、入出力処理を担う。

 シンクライアントを実現する手法としてはシトリックス・システムズやヴイエムウェアが提供する仮想デスクトップ技術がある。こちらはRDPなどの入出力情報転送プロトコルを使って遠隔コンピュータをネットワーク越しに操作する。日本IBMでも一般オフィス用には2社の製品を推進している。一方、今回の新ソリューションではキーボード、マウス、ディスプレイのエミュレーションを用いることで、ワークステーションに求められる応答性を確保した。

 HC10とCP20ではさらに、信号の圧縮・暗号化をハードウェアで行う独自回路を搭載。HC10では上位モデルにグラフィックアクセラレータとして「NVIDIA Quadro FX 1600M」を採用することで、3D CADアプリケーションも違和感なく利用可能なソリューションに仕立てたという。

 「グラフィック・ワークステーションは、当社が明らかに付加価値とイノベーションを提供できる分野だ。今回のコンピューティングモデルは、顧客におけるさまざまな問題に対するベストな答えになる」と日本IBM システム製品事業 ブランド・マーケティング&SMB担当ディレクター ジェイソン・ダイズ(Jason Dies)氏は説明した。

 同氏が指摘した問題は、データの持ち出しなどのセキュリティ上の懸念、ワークステーションの分散による管理の難しさ、騒音や発熱による作業環境の悪化、デスクトップスペース利用効率の悪さ、膨大な電力消費など。

 分散ワークステーションをデータセンター内のサーバに集約することで、デスクトップ側の騒音や発熱はなくなり、セキュリティも含めた集中管理が実現。電力消費についても、通常のワークステーションは電源整流効率が60〜70%だが、BladeCenterの電源装置は90%であり、さらに複数のブレードが共用する形となるため、電力消費は2、3割の削減が可能という。

 新製品では、CP20を用いるユーザーを、認証時のユーザーIDに基づいて、空いている任意のHC10に接続する「コネクションマネージャ」という機能も大きな特徴。この種のソリューションでは特定のサーバと特定のシンクライアント端末をひも付けてしまうと、故障時にユーザーは修理が終わるまで使えなくなってしまう。同機能では利用端末に関係なく、各ユーザーにそれぞれの利用環境をオンデマンドで提供できるため、代替端末を利用することで業務の中断を避けることができる。

 HC10とCP20は10月22日に発売予定。HC10の最小構成価格は35万7000円で、CP20の価格は7万4970円。ブレードサーバのシャーシなど、ほかの必要製品を加えると、初期コストは従来のワークステーションよりも高価になるものの、ランニングコストは低く抑えることが可能だという。

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(@IT 三木泉)

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