サーバもストレージもすべて1つに

“これからのデータセンターを支える”新構想、ブロケード

2007/10/23

 SAN(Storage Area Networking)からFAN(File Area Networking:ファイル利用管理)へ、そしてサーバ用アダプタへと、その世界を広げてきたブロケード。今度はデータセンターに照準を合わせ、「データセンター・ファブリック」(DCF)という構想を発表、今後6カ月間にさまざまな製品や他社との提携関係を展開していくことを明らかにした。

brocade01.jpg 米ブロケードのヴァイスプレジデント兼CTO、ダン・クレイン氏。重要な発表は今後も日米同時に実施していくと話した

 ブロケードが10月23日、日米同時に発表したDCF構想は、企業データセンターにおけるインフラの課題を解決しようとする取り組みだ。日本でこの構想について説明した米ブロケードのヴァイスプレジデント兼CTO、ダン・クレイン(Dan Crain)氏はまず、大規模企業では仮想化技術によりデータセンターやサーバの統合や集約化が進むにつれ、コンピュータ資源利用の最適化が新たな課題になってきていると指摘した。

 「ある国際的な製薬会社は、世界で93カ所のデータセンターを3カ所に減らそうとしている。対象サーバは約5万台だ」(クレイン氏)。こうした取り組みの結果として生まれる新世代のデータセンターでは、全体的な最適化が求められる。あらゆるストレージ、サーバ(および仮想サーバ)をシームレスにつないだうえで、これらを論理的に構成・再構成し、低コストでビジネス上の要求に応えなければならない、という。

 DCF構想の中核となるのは、ブロケードの会計年度の2008年上半期(2007年11月〜2008年4月)に提供開始予定の「Brocade DCX」。データセンター内のあらゆるサーバとストレージをつなぎ込む、“データセンター・バックボーンスイッチ”という位置付けだ。接続プロトコルは、すでに同社の製品で接続可能なファイバーチャネル、iSCSIに加え、現在同社を含む業界コンソーシアムが標準化を進めているFibre Channel over Ethernet(FCoE)の利用を考えているという。

 このマルチプロトコルでの接続性をベースに、パーティショニングやルーティングによってデータセンターにおけるサーバ―ストレージ接続の仮想的な制御を実現、さらに同社やパートナー企業がこの上で、データのレプリケーション、継続的な保護(CDP)、異機種ストレージ間での移行、圧縮、重複ブロック排除、暗号化などのサービスを統合的に提供していく。

 ブロケードは過去2年にわたり、米NuViewなどの買収によるFAN製品群の拡充やサーバ用アダプタ製品群の投入を進めてきた。データセンター最適化を目的として、これらすべてを統合的なソリューションとしてまとめ上げていくのがDCF構想だとも表現できる。

 なお、クレイン氏はFCoEに関して、製品が提供され始めるのが2008年、完全なソリューションがそろうのは2009年あるいは2010年になるだろうとの見通しを明らかにした。

 ファイバーチャネルをIP上に載せるFCIP(Fibre Channel over IP)や、SCSIをIPで距離拡張するiSCSIは、TCP/IP上に実装されているがゆえのオーバーヘッドと不確実性がある。これに対し、FCoEでは、従来のイーサネットの遅延を減らし、より高度なフロー制御を実装し、この上で直接ファイバーチャネルを使ったやり取りを実現する。しかし新しい接続技術であるため部品コストや相互接続性の課題を克服しなければならない。

 クレイン氏は「当初の製品はサーバ間接続用に限定され、しかも(従来型の)ファイバーチャネル接続より高価になるかもしれない。だが、サーバのマザーボード上にチップとして実装されるなど、最終的には出荷数量が増えるとともに価格も下がり、ストレージ接続にも広がっていく、というのがわれわれの考えだ」と、同技術についての期待を示した。

(@IT 三木泉)

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