計算密度を大幅に向上

NEC、1PFLOPSに迫る世界最高速のスパコン発売

2007/10/25

 NECは10月25日、ペタフロップスに迫る839テラフロップスを実現する世界最高速のスーパーコンピュータ「SXシリーズ モデルSX-9」を製品化し、世界同時で販売活動を始めたと発表した。ペタフロップスは1秒間に1京回(1000兆回)の浮動小数点演算性能。従来のSX-8に比べてCPU単体での演算性能は6.4倍で、ノード当たりの演算性能は搭載可能CPU数が増えたことで13倍にアップ。1.6テラフロップスのノードを最大512ノード接続することで839テラフロップスを実現できるという。価格は月額のレンタルで298万円(税込み)から。来年3月から出荷を開始し、今後3年間でSXシリーズ全体で年間200億円の売り上げを目指す。

sx01.jpg 「SXシリーズ モデルSX-9」(マルチノードシステム)

科学計算には依然ベクトル型が有利

sx02.jpg 日本電気 執行役員常務 丸山好一氏)。写っているのは「SXシリーズ モデルSX-9」(シングルノードシステム)

 ハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)の世界では、汎用CPUを多数搭載したスカラー型スーパーコンピュータや、PCサーバをネットワークで接続したグリッドコンピュータが広まっている。こうしたシステムは比較的価格が安く、高い演算性能が得られる。その一方、メモリやネットワークの帯域がボトルネックとなるため大量のデータを扱う科学計算処理には従来から用いられてきたベクトル型スーパーコンピュータが有利だという。標準的なベンチマークテストを用いると「SX-9はスカラー型に比べて気象予測計算分野で3〜4倍、物性計算分野で4〜7倍の性能」(日本電気 執行役員常務 丸山好一氏)。

 コア単体の性能を、従来の16ギガフロップスから102.4ギガフロップスと6.4倍に高めた。SX-9の1CPUは前モデルのSX-8の1ノード分に匹敵する。「多くの処理が1CPUで完結するため通信や並列化が不要」(日本電気 第一コンピュータ事業本部長 西川岳氏)で、オーバヘッドをより低減できるという。各CPUとメモリ間は256GB/sのメモリバンドを確保し、計4TB/sの広いバンド幅を実現した。またノード間は光通信を使った独自の“インターコネクト”技術で128Gbpsの広帯域通信を実現した。

 計算密度の向上により、消費電力、設置面積のいずれも従来比約4分の1となったという。

sx03.jpg 1.6TBの共有メモリを実現するRTRモジュール

 ノード単位で1.6TBの大容量共有メモリを用意する。各CPUはフラットにアクセス可能。コンパイラによる自動並列化処理が可能で、「プログラムのチューニングに時間が割けない研究者にとってプログラミングのしやすさと、高性能を兼ね備えたマシン」(丸山氏)だとしている。ベクトル型スーパーコンピュータの性能を引き出すために、これまで研究者は本業ではない並列化処理や大規模計算のための最適化というプログラミング作業を行ってきた。アーキテクチャを共有メモリ型としたことで、これらの作業を自動化できたことが現場の研究者の要望に応えるものだという。

 NECでは今後はベクトル型とスカラー型を組み合わせたハイブリッド型のシステムを手がけていくとしており、そうしたアーキテクチャで有用となるグローバルファイルシステムやキューイングシステムの開発を進めているという。

 SXシリーズはこれまでワールドワイドで約1100台を出荷。日本、イギリス、フランスの気象庁やドイツのシュツッツガルトの大学など、気象・気候関連を中心に多くの研究機関に採用されている。

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(@IT 西村賢)

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