MSとの提携の理由は「会話」

TOMOYOもクラスタもKVMも……ターボリナックスがサーバOS新版

2007/10/31

 ターボリナックスは10月31日、サーバOSの新バージョン「Turbolinux 11 Server」を発表した。2004年10月にリリースされた「Turbolinux 10 Server」以来、3年ぶりのメジャーバージョンアップとなる。

 Turbolinux 11 Serverは、企業エントリクラスからミッドレンジをターゲットとしたサーバOS製品だ。特に、同社が「エッジサーバ」と表現する、インターネットの公開Webサーバでの利用を念頭に置いている。

 「インターネットにさらされることを想定し、セキュリティを強化するTOMOYO Linuxと負荷分散ソフトのCluster LoadBalancerを搭載した」(同社事業推進本部本部長の森蔭政幸氏)

turbo01.jpg Turbolinux 11 Serverのパッケージ

 これまでTurbolinux Serverでは、要望に応じて、TOMOYO Linux同様にセキュアOSの一種であるSELinuxを組み入れて提供してきた。しかし「SELinuxはポリシーの設定が難しく、敷居が高かった。これに対しTOMOYO Linuxには自動学習機能が備わっており、簡単にセキュリティが高いサーバを構築できる」(森蔭氏)。また、Cluster LoadBalancerを標準で提供することにより、クライアントの増加に応じてサーバをシンプルに拡張していくことが可能だという。

 さらに、同社の子会社であるゼンド・ジャパンのツールも同梱される。PHPによるWebアプリケーション開発を支援する「Zend Core」のほか、PHPフレームワークの「Zend Framework」、コード最適化モジュールの「Zend Optimizer」を搭載し、LAMP/LAPPシステムを容易に構築できるようにするという。

 ほかにも、新しいプロセススケジューラである「CFS」やメモリ管理アロケータ「SLUB」などの採用、システム障害時の解析を支援するkdumpの追加、仮想化機能「KVM」の追加など、多くの機能強化が図られた。

 Turbolinux 11 ServerはLinuxカーネル2.6.23をベースとしており、ライブラリはglibc 2.6.1を搭載する。価格は、標準パッケージが4万9350円、1年間のWebやメールによる技術サポートが付属し、最大10サーバまでクラスタリングが可能な「Turbolinux 11 Server Standard Platform」は8万9880円で、11月29日より販売を開始する。別途、ダンプを元にした障害解析などを行う有償サポート「Turbo Support」も提供される。

Windowsとのコミュニケーションを高めたい

 10月23日に明らかにされた、米マイクロソフトとの包括的な提携についての具体的な説明もあった。ターボリナックスの代表取締役社長、矢野広一氏は、提携に踏み切った理由を「TurbolinuxとWindowsのコミュニケーションを高めたいというマインドがあったから」と述べている。

turbo02.jpg ターボリナックスの代表取締役社長、矢野広一氏

 この提携では、「相互運用性の向上」「研究・開発分野における連携」「知的財産の保証」「デスクトップ分野における協調の拡大」という4つの分野で協力する。

 相互運用性の向上に関しては、マイクロソフトのActive Directory環境にTurbolinux製品がシームレスに参加し、シングルサインオンを行えるよう、マイクロソフトの本社側と協力して開発を行う。価格や時期は未定だが、2008年度内にTurbolinux 11 Server向けのモジュールという形で実装、提供する計画だ。

 また研究・開発分野における連携では、2008年春をめどに中国に共同検証センターを開設し、パートナーも含めた検証体制を整備するという。

 知的財産の保証では、ターボリナックス製品に関して、マイクロソフトが保有する特許技術の利用を認めることとなっている。競合するLinuxベンダの中には、これをコミュニティを分断する動きだとして警戒する見方もある。

 この点について矢野氏は、「これまでLinuxには2つの懸念があった。1つは、サポートが継続されるかどうかということだが、この数年間でそれはきちっと実証されてきた。もう1つが、サブマリン特許で地雷を踏んでしまうのではないかという懸念だ。この部分はいまだに『みんなで渡れば怖くない』という状態で、現実には何も解決されていない」と述べ、特許の判断はともかく、現実的に安心を提供するにはどうしたらいいかを考えた結果であると強調した。

 最後の、デスクトップ分野における協調の拡大に関しては、まずマイクロソフトが推進する「Open XML」と「ODF」(Open Document Format)の変換ツール開発プロジェクトなどが掲げられている。矢野氏はこれも現実を見据えた判断であり、ODFが不要であるということではないと述べた。

 「確かにOpenOfficeは標準だが、現実に日本の官公庁や学校では、.docや.xlsといったマイクロソフトのフォーマットが利用されている。OpenOfficeとMicrosoft Officeが会話できるようにすることが重要であり、Linuxがデスクトップで普及していく上でのキラーアプリケーションではないか」(同氏)

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(@IT 高橋睦美)

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