もう1回足腰を鍛え直して売り上げ100億を目指す

ライブドアグループ下でのIPOをあきらめ、他社傘下で出直す弥生

2007/10/31

 弥生は10月31日、業務用パッケージソフト「弥生 08」シリーズを12月7日から販売開始すると発表した。弥生は、2007年9月28日に前の親会社であるライブドアホールディングスから投資ファンドのMBKパートナーズに710億円で売却されたため、新たな親会社の下での再出発となる。同社 代表取締役社長の飼沼健氏は、「新たな親会社の下でもう1回、足腰を鍛え直して出直したい。2008年には売り上げ100億を目指すほか、パッケージ一筋から脱却しASPを開始するなど、新たな旅立ちにふさわしい」と抱負を語った。

飼沼氏と静永氏写真 弥生 代表取締役社長 飼沼健氏(左)と買収したMBKパートナーズ 日本代表の静永賢介氏(右)。MBKパートナーズは1800億円規模の投資ファンドで日本での投資案件1件目が弥生だという。「弥生は利益率の高い、成長性の高い会社。腰を据えて5〜6年は見守っていきたい」とコメントした

 弥生の2007年度の売上高は、前年比6億円増の93億7800万円。しかし、量販店でのマーケットシェアは、本数シェアが2006年の42%から2007年には39%へ、金額シェアは同60%から同58%へそれぞれ低下した。この点について飼沼氏は、「シェア低下の原因は明らかだ。例年すべてのシリーズ製品を一斉にバージョンアップしていたが、07年度版はそれができずに製品によっては06年度版が混在していた。これがユーザーの混乱を招いた結果だ。今年はその反省を踏まえてすべてのバージョンを12月7日に一斉リリースする」と説明した。

 新バージョンとなる「弥生 08」シリーズの最大の特徴は“内部統制対応”だ。日本版SOX法が2008年3月に施行されることから、「ユーザーの多くから、会計ソフトとしての弥生はSOX法にどう対応していくのか、と質問されていた。その答えの1つが今年のバージョンとなる」(同社 執行役員 プロダクトマーケティング担当 竹之内学氏)とコメント。

 実際、全般統制の予防的統制として「ユーザーID/パスワードによるログイン」「アクセス権限設定」機能を提供し、発見的統制としてアクセスログを提供する。業務統制の発見的統制では、「各種警告機能」「伝票・仕訳承認」を、発見的統制としては「仕訳変更履歴」「集計から原始伝票への追跡」機能などを提供する。

 中でも、“会計データの正確性”を担保するために新たに搭載した「伝票・仕訳承認」機能が重要だとした。新たな弥生シリーズでは「会計の最小単位である仕訳に注目」し、弥生販売や弥生給与、その他のシステムからインポート。その仕訳を承認することで決算書を作成する仕組みとなる。決算書は、期間中の仕訳がすべて承認されなければ作成できないほか、販売から会計への仕訳の部分では承認作業によって正確性を保つ。

 「弥生 08」シリーズは、主に会計機能を提供する「弥生会計 08」、販売部門向けの機能を提供する「弥生販売 08」、人事機能を提供する「弥生人事給与/給与 08」、顧客管理機能を提供する「弥生顧客 08」の計4シリーズで構成。それぞれ、中規模向けで上述の仕訳/伝票の承認機能に対応した「ネットワーク」、中小規模向けでスタンドアロン形式の「プロフェッショナル」、個人事業所向けの「スタンダード」が用意されている。価格は4万2000円から。

 飼沼氏は、2008年の最大の目標に売上高100億円超を挙げた。また、営業支援ツール「弥生ワークス」を同社としては初めてとなるASP形式で提供する。そのほか、会計市場拡大のために新たに事業所を設立した札幌での無料講習会や、会計事務所チャンネル(PAP)の拡大を図り、「会計市場全体を拡大させ、ユーザー基盤を増やしていく。ASP市場に参入することでいずれはSaaSへと拡大していきたい気持ちはある」とコメント。

 また、ライブドアからMBKパートナーズへ親会社が変わった点については、「ライブドア事件の発生で独立することになり、まずはIPOを目指した。しかし、ライブドアが証券取引法に抵触しているとされていることから、その子会社である当社がIPOするのは非常に難しいことが判明し、親会社を変えて再度IPOを目指すこととなった。ライブドアグループから独立したことで経営の自由度が上がった。これから数年間は自力を付けていき、数年後のIPOを目指したい」と語った。

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(@IT 大津心)

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