Mozillaのコードとプラグインをベースに独自機能を統合
ソーシャルWebブラウザ「Flock 1.0」を使ってみた
2007/11/05
米Flockは11月3日(現地時間)、ソーシャルWebブラウザ「Flock 1.0」の正式版をリリースした。無償でダウンロードできる。FlockはMozillaのコードをベースに、メジャーなソーシャルサービスに対応する“ソーシャルWebブラウザ”。Flockの実体は、Flickr、Del.icio.us、YouTubeなど個別のサービスに対応するFirefox向けエクステンションを集大成したほか、いくつかの独自機能を施したFirefox。単一のWebブラウザとして提供されている。手元のWindows XP SP2+Firefox 2.0の環境では、FirefoxとFlockの2つのWebブラウザの同居に問題はなかった。Flock 1.0は英語版のFirefox 2.0.0.8をベースにしており、Firefoxでできることは、基本的にすべてできるようだ。
現在バージョン1.0で対応しているのは、SNSのFacebook、ソーシャルブックマークのDel.icio.us、ブログ検索のTechnorati、写真共有のPhotobucket、Flickr、ブログサービスのBlogger、LiveJournal、TypePad、WordPress.com、ミニブログサービスのTwitterなど。MovableTypeやWordPressであれば、自分のドメインで運用するブログにも対応する。
ソーシャルサービスを統合するプラットフォーム
これまでにも個別のサービスを活用するためのエクステンションは存在した。そうした拡張機能や、それらの寄せ集めとFlockが一線を画すのは、ユーザーがWeb上の行うソーシャルな活動を統一的なプラットフォームでサポートするというコンセプトだ。
Flockの特徴の1つは“マイ・ワールド”。Flockに登録したソーシャルサービスやRSSの最新更新データが集約して表示される。各サイトに行かなくても、誰がどんな写真や動画、文章をアップロードしたかが一覧表示で把握できる。
“People”サイドバーも、サービス横断的な機能だ。ログイン中の各サービスでつながりのあるユーザーの活動や発言のうち、未確認のものだけが各サービスごとにタブに集約して表示される。
写真や動画といったマルチメディア系Web2.0サービスで一般化しつつある“メディア・ストリーム”もWebブラウザの専用ウィンドウとして実装されている。メディア・ストリームとは、特定のユーザーが提供する写真や動画を、時間軸に沿って1本の帯の上で眺めるインターフェース。例えば、Flickrの友人を登録した場合、ユーザーが作成したアルバムごとにストリームが定義され、メディア・ストリーム上でチャンネルを切り替えるようにアルバムを閲覧できる。閲覧中のストリームの写真や映像に対しては、それを引用したブログエントリを作成したり、メールを送ったりできる。
メディア・ストリームは、友人・知人が追加した写真以外にも、例えばYouTubeの人気動画やBBC映像などといったように、さまざまWebサイトで、ちょうどテレビのチャンネルのような感覚で提供されている。
“クリップボード”や“ブックマーク”もWeb上に
“Webクリップボード”は、Webブラウザ上で閲覧中のテキストやURLリンク、画像をクリップして後で活用するための機能だ。Webブラウザ画面やメディアストリームの画面から、サイドバーへドラッグ&ドロップするか、右クリックメニューで“ウェブ・クリップボードへ送る”を選択すると、Webブラウザ内のクリップボードにデータを保存できる。クリップできる数に特に上限はないようで、次々にクリップして、後から利用できる。ただし、保存するのはテキスト形式で、画像もURLとして保存される。
クリップしたデータに対しては「View」(見る)「Blog」(ブログを書く)、「Delete」(削除)の3つの機能が使える。Blogを選択すると、あらかじめ登録した自分のブログに対して画像を含む新規エントリを作成する。
ブックマークはDel.icio.usのFirefox用プラグインが統合されている。標準状態で「Ctrl+D」などブックマーク登録作業を行うと、Del.lici.ouへの登録ダイアログが表示される。ブックマークは、ローカルPC上のものも統合されているが、ローカル上のものであってもタグが付けられたり、ワンアクションでオンライン上にアップロードできるなど統合が進んでいる。
ブログエディタやアップローダも統合
アップロード系の機能として“フォトアップローダ”と“ブログエディタ”を備える。
フォト・アップローダはFlickrまたはPhotobucketに対応しており、ローカルPCのフォルダから画像をドラッグ&ドロップすることでアップロードできる。タイトルやタグの設定や、個別の写真の回転など簡単な編集作業も行える。
ブログエディタはWYSIWYGのブログ編集・更新ツール。各種ブログサービスに対応するほか、ユーザー自身でインストールしたMovableTypeやWordPressといったツールに対応する。記者が試したところ、ふだん使っているBlogger.comや、自ドメインで使っているMovableType 3.3とは問題なくデータのやり取りができ、アカウントとパスワードを設定するだけでブログエントリの投稿や編集ができた。
少し驚くのは、ローカルPCからの画像読み込み機能が用意されていないことだ。代わりにクリップボード経由で画像をブログエディタに貼り込むと、いきなりFlickrのフォトアップローダが開いてしまう。もはやFlickrは画像ストレージであるばかりではなく、ブログサービスに対して画像を配信する画像サーバというわけだ。
日本国内サービスの対応にも期待
Flockは、さまざまなサービス間を行ったり来たりして面倒な思いをしているユーザーには福音だ。画像やテキストをローカルPCとWebサービスの間でアップロード・ダウンロードして転送する手間も軽減される。
現状では対応サービスが少なく、はてなやmixi、ニコニコ動画など国内サービスが入っていないため、日本のユーザーにとってはありがたみが半減というところだ。しかし、FlockはFirefox+Web2.0系エクステンションともいえるため、Firefoxユーザーにとっては乗り換えによるマイナス要因が少ない。個別にエクステンションを入れていた“凝り性”のユーザー以外も、まとめて取り込める可能性がある。北米からであっても、徐々にFlockの利用が進めば事情も変わってきそうだ。
Flockは既存のMozillaプロジェクトの製品と同様に、JavaScriptやXULを使って拡張できる。Flockチームは、Flock用の開発環境としてコマンドラインツール群“Fbuild”も用意し、各方面からの開発参加を呼びかけている。日本のサービス提供者が自社サービスをFlockに対応するための技術的障壁は高くないだろう。
Flockや先日発表された米グーグルの「OpenSocial」など、ユーザーサイドや開発者サイドでSNSやソーシャルサービスを連携・統合する動きが加速しそうだ。
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