Heartbeat日本語情報サイト立ち上げの狙いは
安心して使えるオープンソースミドルウェアの組み合わせを
2007/11/05
NTTとNTTデータ先端技術(NTT-DI)、VA Linux Systems Japan、NECの4社は10月5日に、オープンソースのクラスタリングソフトウェア「Heartbeat」に関する日本語情報サイトを開設した。Heartbeat本体のソースコードに加え、技術概要やインストール方法といったコンテンツが提供されている。
HeartbeatはLinux上で動作するHA(高可用性)ミドルウェアだ。複数のサーバを用意して冗長化されたシステムで稼働状況を監視し、障害を検出すると予備のシステムに切り替えることによってサービスの継続を可能にする。現在の最新バージョンは2.1.2だ。
「安心して使える組み合わせ」を提供したい――NTT
日本語サイトの立ち上げに参加した企業の1つであるNTTのオープンソースソフトウェアセンタ、吉田忠城氏(技術ユニット シニア・マネージャ)は、「Linux OSについてはほかにも多くのベンダが推進しており、社内にも徐々に導入されつつあるが、今後システム全体のコスト削減ということを考えると、オープンソースのミドルウェアが必要になってくる」と述べた。
同社自身ユーザーとして、この数年間、社内システムへのオープンソースソフトウェアの導入を進めてきた。大きな目的はコスト削減で、Linux OSのほか、Webサーバの「Apache」とアプリケーションサーバの「Tomcat」、データベースの「PostgreSQL」などを徐々に取り入れている。
しかし、それ以外のミドルウェアとなるとまだ手薄だ。また、これまで積極的に取り組んできたPortgreSQLを落とさずに、サービスを継続させる手法を探るという意味からも、Heratbeatによるクラスタリングに注目することになった。
NTTはこれまで、複数のオープンソースソフトウェアの組み合わせ(スタック)を対象に動作やパフォーマンスを検証し、標準モデルとしてまとめる「OSSVERT」(オズバート)という活動に取り組んできた。ベンチマークテストを通じて基本的な機能や負荷が増大した際の性能を検証し、オープンソースソフトウェアの適用領域を明らかにすることを目的にしており、すでに「Web」と「データベース」という2つのモデルを策定済みだ。
今後は、よりミッションクリティカルな分野に向けて、その枠組みを拡大していく方針だ。ミドルウェアも含めた「安心して使える組み合わせ」を提供することで、システム全体としての安定性を高め、リスクをコントロールできるようにしていきたいと吉田氏は述べている。Heartbeatによるクラスタリングのほか、「UltraMonkey」による負荷分散、あるいはバックアップ機能などが視野に入っているという。
クラスタリングと仮想化の組み合わせに期待――VA Linux
一方VA Linuxでは、これまで蓄積してきたオープンソースソフトウェアに関するさまざまなノウハウとHeartbeatを組み合わせることで、より付加価値の高いシステムが実現できると考えている。特に、仮想化技術「Xen」との組み合わせに期待を寄せていると、同社技術本部本部長の高橋浩和氏は述べている。
「これまで大規模システムに採用されてきたクラスタリングが、(オープンソースのHeartbeatによって)普通のサーバにも適用できるようになった。今後は、仮想マシンどうしのクラスタリングに適用することで、より高い可用性を実現できると考えている」(高橋氏)
たとえクラスタリングを導入していても、実マシンではやはり、サーバを起動してサービスを引き継ぐまでに数十秒から数分は時間を要する。しかし仮想マシンならばハードウェア初期化などが不要になるため、再起動までの時間が短縮でき、サービスのダウンタイムをいっそう短縮できる可能性があるという。
Heartbeatによって企業の選択肢が増えるのもメリットだと同氏は述べた。「今はLinuxに商用クラスタソフトの組み合わせがけっこう多いが、多くの企業にとってはコストがかさみ、敷居が高かった。Heartbeatによってそのほかの選択肢が増え、これまでクラスタリングを導入していなかったところでも使えるようになる」(高橋氏)。そもそも、オープンソースソフトウェアどうしは相性がよく、バランスのよいシステムを組むことができる点もメリットだという。
オープンソースソフトウェア全般に言えることだが、確かにHeartbeatは、商用ソフトに比べると見た目の良いGUIや多機能さといった点では一歩劣る。しかし、「クラスタリングを実現する」という基本的な機能の部分では必要十分条件を満たすものだし、「ゆっくりゆっくりではあるが、一歩ずつ進んでいる」(同氏)という。
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