デジタル家電やキオスク端末など組み込み市場向け

x86 Linux起動高速化ソリューション発売、トライピークス

2007/11/06

 トライピークスは11月6日、組み込みLinux搭載製品の起動時間を短縮するソリューション「TP InstantBoot」を新たにx86アーキテクチャに対応させ、「TP InstantBoot Version 1.0 for x86 architecture」として発売した。2006年5月に発売した最初のバージョンではMIPSにのみ対応していたが、要望の多かったx86アーキテクチャへの対応に応えた。取締役 最高技術責任者の湯浅陽一氏は「米国市場の話だが新規製品開発用OSの7割以上がLinuxという調査もある。Linuxではアプリケーションの高機能化、複雑化により起動が遅くなるという問題が出てきている」と話す。

tripeaks01.jpg 取締役 最高技術責任者の湯浅陽一氏

 TP InstantBootの特徴は、Linuxカーネルやアプリケーションに対してほとんど修正を加えることなく、カーネルやアプリケーションのロードと初期化を高速化できること。Linuxカーネルやアプリケーションが起動した任意の状態でメモリ状態やCPUのレジスタ状態をスナップショットとして取り込む。電源投入時にストレージデバイスから保存したスナップショットのイメージを読み込み、イメージ保存処理直後の状態に制御を戻すことで起動する。

 通常のハイバネーションが途中までOS起動と同等のプロセスを踏むことから、あまり起動が高速化しないのと異なり、TP InstantBootではアプリケーションまで含めたすべてのメモリイメージを保存・展開して起動する。標準的なLinuxディストリビューションでデスクトップ環境の起動に約180秒かかるのに対して、TP InstantBootを用いた起動では約15秒になる。MIPS版のTP InstantBootを採用している三洋電機のデジタル液晶テレビでは、電源投入から画面表示まで約6秒と同類製品より高速。カーネルのチューニングなしに、Linux起動部分のロード時間を約4分の1に短縮できたという。

 これまでにも高速化のためのカーネルチューニングなどをメーカー各社は行ってきたが「個別のアーキテクチャで別々に行う必要がある。また、変更を加えたことで品質保証作業という新たな工数も発生する」(湯浅氏)。アプリケーションまで含めた形での高速化を実現するTP InstantBootは家電メーカーからの引き合いも増えているという。一般的に用いられているPC向けブートローダの「GRUB」に対応したことで汎用性を高めたほか、x86向けでは大容量のメモリサイズにも対応した。

 医療機器、POS、FA機器、計測器機、キオスク端末など、x86アーキテクチャの採用が進む組み込みシステム分野向けに販売していく。1年間で20プロジェクト、5000万円の売り上げを見込む。MIPS版のTP InstantBootは、発売後の約1年半でDVDプレーヤー、デジタルテレビなど10プロジェクトでの採用実績があるという。

 トライピークスは2005年11月創業。資本金1億円、従業員15名。LinuxカーネルのメンテナやGNOME日本ユーザ会の委員長などのエンジニアを中心に、Linuxカーネル、ミドルウェア、アプリケーションの移植、開発、設計コンサルティングなどを行っている。

(@IT 西村賢)

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