採用拡大を目指しアピール
ソニー、アップル効果? PostgreSQLが反撃開始
2007/11/08
オープンソースのデータベースサーバ「PostgreSQL」は、現在普及している「MySQL」の陰に隠れているものの、徐々に移行ユーザーを獲得しつつあると、支持者らが主張している。
開発が始まった1980年代以来、PostgreSQLは、長い時間をかけて技術的な進歩を遂げてきた。当初は「Postgres」と呼ばれていた。支持者らは、今日のPostgreSQLは十分な先進性を備えた、開発者の利用に耐えうるものであり、プロプライエタリ製品に取って代わる安価なオープンソース製品の代表格となったと述べている。
10月に発表された、「Independent Oracle Users Group」(IOUG)の会員226名を対象にした最新調査結果によれば、オープンソースおよび「Express」版データベースを使用している回答者の74%が MySQLユーザーである一方、PostgreSQLを利用しているのは20%だという。2006年のIOUGによる調査では、PostgreSQLを使っている割合はわずか9%とされていた。
メリーランド州コロンビアのOmniTI Computer Consultingでデータベースアーキテクトを務めているロバート・トリート氏は、「どのような市場であっても、すでにシェアを確立しているソリューションを追い落とすことは極めて難しい。IBM、オラクル、マイクロソフト、MySQLなどはいずれも多くのシェアを獲得している。しかし、PostgreSQLはいい軌道に乗っていると考えている」と話した。
PostgreSQLで第一の貢献者と考えられているトリート氏は、同製品の成長を支えている要素として、柔軟性の高いライセンス体系と、コスト削減を意図した企業によるオープンソースソフトウェアへの移行志向を挙げている。また、ソニーやアップルといった技術企業がPostgreSQLベースのソリューションを使用していることが知られるようになり、知名度が上がったのもプラスに働いたという。
Forrester Researchのアナリストであるノエル・ユーハンナー氏は、商用のクローズドソースデータベースと比べ、オープンソースデータベースの採用率は全般的に上昇傾向にあるとした。新規ライセンス、ソフトウェアメンテナンスおよびサポート、コンサルティングサービスなどを含むオープンソースデータベース市場の規模総額は約6億5000万ドルに達すると、同氏は見積もっている。
Forresterが最近実施した調査では、自社の環境に少なくとも1つはオープンソースデータベースがあると答えた企業が32%に上っており、2003年の約11%から大きく躍進したそうだ。
「オープンソースデータベース導入事例の大半がMySQLに関係している状況は、今でも変わっていない。PostgreSQLの採用も増えてはいるが、最近になるまで、同ソフトウェアを商用としてサポートするベンダが出てこなかったのは大きな痛手だ。PostgreSQLの導入は、常にコミュニティが中心となって進めてきたのである。そうとはいえ、EnterpriseDBやサン・マイクロシステムズがPostgreSQLを後押しするようになり、ある程度の道はついた。もちろん、採用をさらに促進するためには、まだまだやるべきことは残っている」(ユーハンナー氏)
自社の「Advanced Server」製品にPostgresを実装しているEnterpriseDBは、PostgreSQLの24時間技術サポートおよびサービスやトレーニングを専門家に提供しているプロバイダーとして、これまで市場を牽引してきた。
PostgreSQLコミュニティのリーダーであり、EnterpriseDBの上級データベースアーキテクトでもあるブルース・モムジャン氏は、「PostgreSQLの先進的な技術特性とすぐれた拡張性を評価し、EnterpriseDBは同製品を選択した。使いやすさという点では、(PostgreSQLは)MySQLに引けを取らないと自信を持っている」と話している。
「組織的な採用に関しては、PostgreSQLは商用データベースからの乗り換えユーザーを数多く獲得している。一方で、MySQLはほとんど新たなWebアプリケーションと言ってもよい存在になった。(PostgreSQL)のユーザー層は、例えばNational Weather Serviceのような膨大なデータを扱わなければならない企業や、利益幅の薄い企業が大半を占めている」(モムジャン氏)
オープンソースデータベースの一般的な採用を促進するためのカギは、これまでと同じく、コストメリットやベンダサポートの充実、さらにはツール、アプリケーション、サービスといったエコシステムの拡大であると、ユーハンナー氏は指摘した。また、移行の手間や、トレーニング、移行、インテグレーションにかかわる長期的なROI、管理問題などが、普及を阻む原因となっているという。これに加え、セキュリティやパフォーマンスといった懸案事項もまだ解決されていない。
「オープンソースデータベースは無料だが、だからといってコストが一切かからないわけではない」(ユーハンナー氏)
トリート氏は、現段階のPostgreSQLには、サードパーティアプリケーションや教育用文献および書籍の数が少ないなど、ほかの製品が備えているユビキタス性が欠けているが、転機は間もなく訪れるだろうと述べた。
「PostgreSQLの利用者が増え、PostgreSQLを利用していることを公言するようになれば、本格的な雪だるま効果が現れると予想している」(トリート氏)
(eWEEK Brian Prince)
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