シマンテック調査結果から
空前の人材不足でもエンジニアが大事にされないのはなぜか
2007/11/27
シマンテックは11月27日、世界的に行ったIT環境についての調査結果「State of the Data Center Research」を発表した。企業情報システムの現場では世界的にIT人材が不足。その中でも日本は特に深刻だった。
調査は米Ziff Davis Enterpriseが実施。世界の情報システムの開発、運用に関わる800人以上が答えた。対象企業の平均従業員数は3万1250人。年間の平均IT予算は米国企業で78億円、米国以外の企業は59億円。Global 2000に入る大企業が中心。800人超の回答者のうち、日本の回答者は12.2%を占める。
情報システム管理の世界的な課題は人員の不足。回答者の52%が人員が不足していると答えた。さらに「適切な人材が見つからない」が86%を占めるなど、「エンジニアの頭数ではなく、(優秀な)人材が不足している」(シマンテック マーケットインテリジェンスマネージャ 金崎裕己氏)という現状が明らかになった。要求されるサービスレベルを満たせない理由としても「職務を満たすだけの(エンジニアの)スキルがない」(57%)、「(エンジニアの)スキルの幅が狭い」(60%)などが挙がった。
日本は特に人材不足が深刻だ。世界平均の52%を上回り、日本の回答者の61%が自社のデータセンターについて「人員不足の状態」としている。さらに73%が「適切な人材が見つからない」、53%が「従業員の維持」を人員関連の最大の課題と答えていて、いずれも世界平均を上回っている。
日本で特に人材不足が深刻に考えられている理由を、金崎氏は「日本の情報システムが人に依存しているから」と推測する。日本の情報システムは、標準的な運用管理基準や運用管理ツールを全社で導入することなく、現場の担当者の創意と工夫(と犠牲)で成り立っているケースが多い。属人的な運用が中心となり、サービスレベルが安定しない問題もあるが、経営層にとっては多少の無理を聞いてくれたり、柔軟な運用が取れるというメリットがある。
金崎氏は「欧米は人材不足をツールで補おうとするが、日本は新技術に消極的だ」と話す。運用管理の中心に人がいるため、その人材不足の問題も「人の補充」で乗り切ろうとしているのだ。同調査によると、「仮想化の利用率が世界中で最も低いのは日本」。新技術に対する消極性は際立っている。
人への依存は同一性が強い日本の文化的な問題との指摘もある。欧米の契約社会とは異なり、日本ではお互いの信頼をベースに口頭でのビジネスが一般的だ。しかし、人に依存している反面、多くの日本企業は人への教育投資を渋ってきた。金崎氏は「企業の運用管理者のレベルが下がってきたと感じる」と話す。原因はエンジニアの教育、トレーニング不足だ。教育、トレーニングのコストを負担すべき企業がこれまでの不況で、そのコストを削り続けてきた。ベンダやシステム・インテグレータに自社の情報システムを丸投げする体質も残っていて、社内のエンジニアが育っていない面もある。
同調査によると、生産性についての調査で「職務を満たすだけの(エンジニアの)スキルがない」「(エンジニアの)スキルの幅が狭い」と答えた日本の回答の比率は、世界平均と比較して高い。しかし、やはり投資は出し渋るようで、企業情報システムに対する今後2年間の平均予算増加率は、世界平均が7.1%なのに対して、日本は4.9%だ。
結果として日本企業が考えるのは社内エンジニアに頼らない「アウトソーシング」。サーバメンテナンスやバックアップ、ストレージ管理などでアウトソーシングを利用する比率は日本が世界を大きく上回るという。金崎氏は、売り上げに占めるIT予算の比率が日本企業は米国企業の半分とのデータを紹介したうえで、「日本企業の問題の根っこにはIT投資の少なさがある」と指摘した。
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