資金集中率では二極化し、効果にも差が現れる
大企業におけるCMSの導入状況は8割〜アビーム調査
2007/11/28
アビームコンサルティングは11月28日、連結経営を重視する大企業を中心に導入が進んでいる「CMS(キャッシュ・マネジメント・システム)」の導入効果に関する調査結果を発表した。調査によると、導入企業は8割を超えており、資金集中率で二極化していることが判明した。
調査は、同社と社団法人企業研究会が2007年9月に実施。連結売上高2000億円以上の東証1部上場企業400社を対象にアンケート調査を行い、有効回答数は86社だった。業種別に見ると、製造業が66%、商業12%、電気・ガス8%、運輸・情報通信6%。連結売上高構成比は、1兆円以上が38%、2000億〜5000億が33%、5000億〜1兆円が21%だった。
CMS(キャッシュ・マネジメント・システム)導入後の効果におよんだ調査としては初めてのケースだという。CMSとは、大企業が複数のグループ会社の資金を一個所に集約し、資金面の効率化を図るもの。プーリングといわれる資金集中・配分処理が基本サービスとなるが、そのほかにも「給与振込み代行」や「資金繰り管理」などのサービスも含まれる。アビームコンサルティング 経営戦略研究センター ディレクター 木村公昭氏は、「CMSは、連結決算が始まった2000年3月ころから注目を集めた。グループの資金を親会社が一元管理することで、不景気だった当時のリストラなどが普及を促進させた」と説明した。
調査によると80%の企業がCMSを導入済みだった。導入済み企業のサービス導入状況は、プーリングサービスが94%、定期性貸借が67%、資金繰り管理が46%、支払代行が46%だった。CMS導入効果に対する評価は、「想像以上の効果が出ている」が13%、「ほぼ想定どおり」が84%で、合わせて97%のユーザーが満足しているという、極めて異例の結果となった。
資金集中率は、75%〜100%が39%で一番多く、次いで25%未満の20%、25%〜50%の14%、50%〜75%の14%となり、大きく二極化していることが判明した。ここでいう資金集中率とは、グループ資金の中でCMSに集中した資金の割合を指す。この状況について、木村氏は「CMSが比較的安価なため、費用対効果の面で満足している企業が多いのだろう。しかし、『どこまでCMSを活用するか?』という面においては企業間の温度差が大きいようだ」と分析した。
また、資金集中率によって利用サービスの利用率にも差が現れた。資金集中率が高い企業は、基本サービスであるプーリングサービス以外のサービスも利用率が高いのに比べて、資金集中率が低い企業はプーリングサービス以外のサービスの利用率が低く、多いものでは2倍程度の差が出ている。「つまり、資金集中率の高い企業ほど、CMSを有効活用し、資金効率も上昇させていることが分かる。しかし、資金導入率を上げるためには子会社の協力が必須であり、地道な説得作業など壁も高い」(木村氏)と説明した。
アビームコンサルティングでは、日本企業におけるCMS利用の今後の課題として、プーリング以外のサービスを利用する「CMSサービスの拡充」や、「資金繰り精度の向上」「海外グループ会社への展開」「システムの高度化」などを挙げた。
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