現状は「データ連携のスパゲティ状態」

マスタデータ統合でインフォテリアが新製品群を発表

2007/12/04

 インフォテリアは12月4日、MDM(Master Data Management)関連の製品やサービス群「ASTERIA MDM One」を発表した。マスタデータの連携を行う「ASTERIA MDM One Master Hub」(400万円〜)、既存マスタデータのクレンジングや統一化を行うサービス「ASTERIA MDM One Data Quality Service」(200万円〜)、統合用テンプレートの提供とコンセプトトレーニング、コンサル支援サービスを行う「ASTERIA MDM One Generic Template Service」(価格未定)、統合マスタ管理用のインターフェイス製品「ASTERIA MDM One Master Maintenance Interface」(価格未定)を、2008年2月中旬から順次提供を開始する。

mdm01.jpg インフォテリア 代表取締役社長 平野洋一郎氏

 同社は業務システムのデータ連携ソフトウェア「ASTERIA」シリーズで、同市場における国内最大手。現在、企業内のITシステムは用途や部門ごとに分散化しており、それぞれのシステムでデータの入力が必要だったり、同一データが重複しているという問題がある。同社代表取締役社長 平野洋一郎氏は今回の製品群の位置付けを「手組みで連携しているケースが多い。ASTERIAを使って手組みで連携しているケースが多いがMDMがボトルネックとなっている。そうした背景から、新製品は“つなぐテクノロジー”を1つのパッケージとして形としてお届けするもの」と説明する。

現状は「データ連携のスパゲティ状態」

 都内で行われた同社主催のイベント「MDMサミット2007」で講演したインフォテリア執行役員 エンタープライズ事業部長の油野達也氏は、現在の業務システムは“パッケージパラドクス”の状態にあるという。1980年代中盤以降、かつて大型汎用機で個別開発していた時代から徐々にパッケージソフトウェアの時代へと移行した。安価であったことから、各部門がさまざまな業務ソフトウェアを導入した結果、システム間連携が複雑になり「データ連携のスパゲティ状態」(油野氏)になっているという。

 ある会社に新入社員が入った場合、入退室管理システム、給与システム、販売管理システム、メールシステム、ワークフロー、異動管理システムなど、それぞれのシステムで社員情報を多重入力しているケースが多く、「少ない会社でも社員が1人入るたびに6回の入力、一般的には8回程度は多重入力をしている」(同)という。各システムは総務部、人事部、経理部など各部門ごとで管理され、個別に経費として計上されるため、「全社規模で見ている人はいない。部門経費は予算通りなので問題になりづらい」(同)。

 マスタデータの分散はビジネスチャンスの損失にもつながるという。「ある航空会社のWebサイトで買ったチケットを電話でキャンセルしようとしたら、予約がありませんと言われるというケースも起こっている。企業が持つデータの品質が、事業の品質、企業経営の品質に大きく関わってくるようになっている」(同)。こうしたことから同社は“データガバナンス”という概念を提唱。データの一定にクオリティを保つ統制と、運用サイクルの確立が重要だという。

ボトムアップ型アプローチで「できるところから」

 ASTERIA MDM One Suiteでは、これまで実際に手組みなどでデータ連携を行ってきた実績を持つパートナー企業のノウハウを取り入れたという。ASTERIA MDM One Suiteでは、全社レベルで組織間、システム間の事前調整が必要なトップダウン型ではなく、「できるところから連携していき、段階的にマスタ統合を実施する」(エンタープライズ事業部 製品戦略マネージャ 山崎将良氏)というボトムアップ型のアプローチを取る。トップダウンの場合、マスタ統合への圧力が強すぎると、個別システムの柔軟性が失われる本末転倒な結果にもなりかねない、という。「一見遠回りに見えるが結果的には近道。ターゲットを絞り、効果を計りながら対応していける」(山崎氏)こともメリットだ。具体的には、従来個別にデータ連携を行っていたシステム全体の中心にASTERIA MDM One Master Hubを設置。第1段階では特定システムからの入力が、多システムへハブを介して波及するようにし、統合リポジトリにマスタ管理項目と管理データを蓄積していく。異種のマスタデータも徐々にハブからリポジトリに吸い上げ、最終的には統一リポジトリの管理情報を元にハブを介して各システムがデータを入出力する形へ持っていくという。

mdm02.jpg ASTERIA MDM One Suiteの概念図
mdm03.jpg ASTERIA MDM One Suiteの画面イメージ。俯瞰的なマスタ相関図を提供する

(@IT 西村賢)

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