規制は中間報告から後退
「情報通信法」(仮)が最終報告――ネットに「最低限の規律」
2007/12/06
総務省の「通信・放送の総合的な法体系に関する研究会」は12月6日、通信、放送に関する9つの法律を「情報通信法」(仮)に一本化し、通信、放送業界の垣根を低くすることで競争を促すことを提言する最終報告書を発表した。ネット上のコンテンツも情報通信法の対象となり、規制が強まると指摘する声もある。
報告書の内容は基本的には6月に発表した中間報告(参考記事:ブログ、2chも対象にする「情報通信法」(仮)とは)を踏襲する。通信、放送の法制を従来の縦割りモデルから、「コンテンツ」「プラットフォーム」「伝送インフラ」「伝送サービス」「伝送設備」などのレイヤ別に転換し、それぞれが柔軟に連携できるようにする。
情報通信ネットワーク上を流通するコンテンツについては、公然性があるコンテンツとして、その社会的影響力に応じて、特別な社会的影響力を持つ「メディアサービス」(仮)と、特別な社会的影響力がない「オープンメディアコンテンツ」(仮)の2つに分ける。社会的影響力については(1)映像/音声/データといったコンテンツの種別(2)画面の精細度といったサービス品質(3)アクセスの容易性(4)視聴者数(5)有料・無料の区別で判断するとしている。
メディアサービスは現行の放送を想定していて、さらに現在の地上テレビ放送を指す「特別メディアサービス」(仮)と、CS放送やインターネットを使った放送を想定する「一般メディアサービス」(仮)に分ける。特別メディアサービスには現行の規制を適用、一般メディアサービスは災害放送義務など現行の規制を緩和する。
インターネット上のコンテンツが含まれるのはオープンメディアコンテンツ。報告書はオープンメディアコンテンツについて「不特定の者によって受信されることを目的とする電気通信の送信(ホームページなど)」と定義。ブログなども含むと見られる。そのうえで報告書は、オープンメディアコンテンツについて、「内容が他者の権利を侵害したり、公共の安全や青少年の健全な成長を損なったりすることのないよう、表現の自由と公共の福祉を調整する最低限の規律を検討する必要がある」としている。
報告書はオープンメディアコンテンツの規制について、対象を「違法な情報」と「有害な情報」に分けて説明する。違法な情報について国が直接的な規制を行うことは「ここ数年で急速に開花した我が国の自主・自律を旨とする豊かなネット文化と相容れない可能性が高い」として、行政機関が直接関与しない形で、「情報通信ネットワーク上で情報を流通させる全ての者が本来遵守すべき最低限の配慮事項を、具体的な刑罰を伴わない形で整備することを検討すべき」と提言する。
違法とはいえないものの、公共の安全を脅かす可能性がある有害情報(報告書は公序良俗に反する情報や青少年に有害な情報を例として挙げる)については、フィルタリング技術を使い、一定の範囲に限って規制を行うゾーニング規制の検討を提言している。
オープンメディアコンテンツに対する規制は中間報告から後退した印象だ。中間報告ではオープンメディアコンテンツ(中間報告では「公然通信」)の有害コンテンツについて「表現の自由と公共の福祉の両立を確保する観点から、必要最小限の規律を制度化することが適当」としていたが、最終報告では上記のように「最低限の配慮事項を、具体的な刑罰を伴わない形で整備すべき」となった。中間報告公開後にネットを中心に議論の的となったネット規制への懸念が反映されたとみられる。
また、メディアサービス、オープンメディアコンテンツについて「表現の自由を保障すべき」と改めて明記し、懸念の払拭に努めている。
報告書は2008年初頭にも情報通信審議会に諮問され、2009年中に答申を得る予定。総務省は2010年にも情報通信法案を国会提出する計画。
関連リンク
情報をお寄せください:
最新記事
アイティメディアの提供サービス
キャリアアップ
- - PR -
転職/派遣情報を探す
「ITmedia マーケティング」新着記事
変わり続ける顧客、変わり続けるマーケティング 2024年に最も読まれた記事ランキング
マーケ×ITの最新潮流を伝えるITmedia マーケティング。2024年、読者はどんな記事に注目...
勘違いマーケター戦慄 消費者の約半数は「広告主に無視されている」と感じている件
「データに基づく顧客理解」「ハイパーパーソナライゼーション」などマーケティングかい...
AI・ARで「探索」 人より商品とつながるSNSの行く末――2025年のSNS大予測(Pinterest編)
ビジュアル探索プラットフォームとしての独自の道を進み続けるPinterestはもはやSNSでは...